研究課題/領域番号 |
23K02575
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
片岡 美華 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (60452926)
|
研究分担者 |
金丸 彰寿 神戸松蔭女子学院大学, 教育学部, 准教授 (70848952)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 自己権利擁護 / 知的障害児の発達 / 自己理解と提唱力 / セルフアドボカシー教育開発 / 特別支援教育教員研修 |
研究実績の概要 |
本研究は、知的障害のある児童生徒のセルフアドボカシー(自己権利擁護)の力の育成を目指し、特別支援教育教員に対してセルフアドボカシーの知識と指導法を伝え、アドボケイターとして養成するための教育開発を目的とした研究である。 初年である令和5年度は、学術的問い(1)の「何を教え、どのように指導するべきか」を中心にこれまでの先行研究やセルフアドボカシー教育の実践記録を参考に教材開発を行った。教材は、セルフアドボカシーの理論編と実践編として構成し、各内容を30~45分程度で学べる動画を作成することを計画した。これは、教員が校内研修や空き時間を活用して研修できる程度の長さとしており、負担なくいつでも何度でも学べることに重点を置いている。このうち、理論編に位置づくセルフアドボカシー概念、用語整理、セルフアドボカシーの発達段階についてスライド教材を作成した。また実践編に位置づく、セルフアドボカシー指導の枠組み、活動の位置づけ、実践上の留意点、学習指導要領との関係についてもスライド作成しまとめた。一部はすでに音声入力も行い、完成しているが、学会や研修等での反応を見てさらにブラッシュアップするために検討を行っている最中である。 また、並行して幼児へのセルフアドボカシー教育実践を行い、発達段階との関係や知的障害がある場合を想定した指導法について検討を重ねた。セルフアドボカシーはインクルーシブな場においてより必要となることから、知的障害とインクルーシブ教育の関係性についても先行研究を行った(夏に学会発表予定)。さらに授業づくりや教員研修の在り方については、継続的に行っている事例検討会や本研究でも用いる附特式の授業研究法などにより日常的に検討を重ねており、本研究にも応用できる環境下にある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度交付申請時の計画では、2023年度において指導内容の検討と教材化が主たる内容であった。これに対しては概ね達成できており、実際に教材化を意識してまとめたスライドを用いて3回の報告(2回は学会の教育講演、1回は研修会)を行い、かなり内容を厳選しわかりやすく伝えられるようになってきていると考える。11月には共同研究者と進捗状況やコンテンツの確認と今後の活動について打ち合わせを行い、2月にも同様の内容で確認を行った。結果、追加修正が必要ではあるものの、概ねこの内容で進めることで一致した。 このあと第一段階の研修に入るが、対象者への依頼を済ませ、現在倫理委員会の結果を待っているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
R6年度は、教材化したコンテンツをもとに、まずは少人数(10名程度)からアドボケイター養成研修を開始し、そこでの反応や評価をもとにコンテンツのブラッシュアップを図る(第一段階)。そして次に地域や人数を広げて同様に研修を行っていく(第二段階)。さらにファシリテーター養成としてまずは数名(特別支援学校と特別支援学級合わせて3か所ほど検討中)から附特式授業研究法を用いて指導の在り方にも着手することを検討している。なお、対象となる教員、学校の選定については研修や参観を通して日常的にやり取りを行っており、めどが立っている。 一方、本研究の中心内容ではないが、セルフアドボカシー教育と発達段階との関連性、障害特性との関連性、指導法などを理解しておくため臨床的活動が必要だと考えている。R5年度まで幼児を対象に行った実践であるが、R6年度以降の対象児の見通しが立っていないことから、この点について新たに募集をかけるなどしたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、当初案から国際学会(開催地シカゴ)での報告を予定していたが、現在の物価高騰と円安により、当初予定していた額では全く賄える見込みがないことから、本年度の支出を抑え、次年度の学会費に充てることとした。 研究分担者については、本年度は別の経費で旅費を賄ったため本研究費では必要な物品購入のみに留まったが、次年度は学会参加を含めて計画的に使用する予定である。
|