研究実績の概要 |
文字の提示方法によって、発達性読み書き障害児の読みやすさが変わるのであれば、教育現場での対応は大きく変わるだけでなく、発達性読み書き障害児への支援向上にも繋がるはずである。しかし、有色透明フィルム、文字の大きさ、書体の影響は、複数の研究から否定されている。現在、海外で唯一、発達性読み書き障害児の文字の読みやすさに影響を与えると考えられている視覚的要因が文字間の間隔および行間である。もし、教材の単なる拡大コピーではなく、文字間の間隔や行間を考慮した文字提示による対応が読み能力向上に寄与するのであれば、発達性読み書き障害児にとって大きな支援となるが、日本では、まだほとんど検討が行われていない。また、文字間の間隔や行間の恩恵を受ける発達性読み書き障害児の背景やタイプについても明確でない。 本研究では、文字間の間隔および行間が、日本語話者の発達性読み書き障害児の音読における正確性、流暢性および易疲労性に与える影響を、発達性読み書き障害児の認知障害の種類を考慮して検討する。 2023年度は、海外の先行研究(Laura et al.,2002 ; Marinus et al., 2016 ; Galliussi et al., 2020など)を参考に、文字の間隔を操作した音読課題と、行間を操作した音読課題について、刺激や手続きを検討した。当初の計画では、予備実験を実施して難易度や実施時間について十分検討し、必要に応じて調整を行うことになっていたが、実際には音読課題の刺激や手続きの検討に留まった。
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