研究課題/領域番号 |
23K02653
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
赤池 英夫 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (00262379)
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研究分担者 |
赤澤 紀子 電気通信大学, アドミッションセンター, 特任准教授 (70791250)
角田 博保 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 客員教授 (70152600)
中山 泰一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70251709)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 情報科 / 知識体系 / 教科書 |
研究実績の概要 |
本研究では、用語ベースで高等学校の情報科の「知識体系」を明確化し、ソフトウェアによる処理が可能なデータ構造で表現し管理するシステム(「知識体系管理システム」)の構築を目指している。 本研究に先立ち、まず学習指導要領改訂(平成30年告示)に基づく教育課程(現行課程)において2022年度から必履修科目となった「情報Ⅰ」の全教科書の索引に掲載されている全用語を取り出し、高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材に示された領域に沿って分類した。しかし、真に有用な知識体系を構築するためには、学習レベルを始めとして各用語に付随する様々な属性、さらには用語間に存在する様々な関係を知らなくてはならない。そのために、まず現行課程における選択科目である「情報Ⅱ」、1世代前の課程における「社会と情報」「情報の科学」および2世代前の「情報A」「情報B」「情報C」の教科書の索引に現れる全用語も抽出することで、2003年度より始まった全情報科の用語を網羅し、世代ごとの全教科書数と全出版社数からそれぞれの用語の総意度と総意率(0から1)を求めた。用語の中で総意率の高いもの(0.5以上)を重要用語と位置付け、時間軸に沿って重要用語の出現を追跡することでその変遷を調査した。この総意度や総意率は知識体系に盛り込む重要な属性のひとつである。また、本研究の過程で得られた「情報科全教科書用語」をresearchmap上で公開した。 さらに視点を変え、47都道府県ごとの「情報Ⅰ」の教科書の需要数も調査した。各科目の教科書の需要数の取得には公文書公開手続きを利用した。代替科目を使うことの可能な専門学科やSSH指定校の影響による誤差もあるが、現下の情報科の開講学年や地域差などの実施状況や連携すべき科目との関係を明らかにした。これらについても知識体系の属性となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的としている用語ベース「知識体系」の構築には、用語毎の属性を定義しその値を決めることと、用語間の関係を明らかにすることが必要である。 本研究に先立ち、まず学習指導要領改訂(平成30年告示)に基づく教育課程(現行課程)において2022年度から必履修科目となった「情報Ⅰ」の全教科書の索引に掲載されている全用語を取り出し、高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材に示された領域に沿って分類した。さらに課題初年度には、2003年度から現時点までの情報科の全教科書に掲載された索引用語を全て取り出し、知識体系の骨格となるデータを収集した。骨格である個々の用語に対して、用語毎の属性(様々な付加情報)と用語間の関係で肉付けする必要があるが、これらいくつかの視点から属性および関係について調査するとともに、計算機処理を可能とするためのデータ構造を検討した。 また知識体系をWebベースで操作するための「知識体系管理システム」の実現法についても検討している。知識体系を関係データベースあるいはグラフデータベースとして保持し、グラフ構造を可視化し直感的に操作するためのGUIインタフェースを想定している。また、複数人でのブラッシュアップによる知識体系のアップデートを想定しているので、そのための管理法やセキュリティ対策も調査中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で目的としている用語ベースでの「知識体系」の構築には、用語毎の属性を定義しその値を決めることと、用語間の関係を明らかにすることが必要である。用語の属性と用語間の関係は一度決めてしまえば不変というものではなく、必要に応じて追加、削除、修正などを行い洗練させていくが、これは「知識体系管理システム」を介したPDCAサイクルにより達成する。 令和6年度は知識体系の初版の実現を計画している。そのためにまず、用語の主たる属性である学習レベルの値としてその用語の総意率を割り当てる。次に、この20年間のどの教育課程で採用されたのか、現行課程の教員研修用教材におけるどの分類に属すのか、教科書需要数から得られる各用語に対する高等学校生徒の認知度といった属性などを付与する。また、先行研究で調査した用語間の上位、下位、関連といった関係、教科書本文を自然言語処理することで得られる用語間の共起関係を設ける。さらには生成AIを利用した用語間の潜在的関係の抽出も検討している。以上に加え、様々な切り口から用語の属性および用語間の関係を調査する。 知識体系の初版をデータベース化し、それをWebベースで操作可能な知識体系管理システムを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、紙媒体での一次資料から機械可読にしたデータを蓄積し、それに各種の自然言語処理を行うために必要な計算機およびOCRソフトウェアなどの購入を検討していた。 まずは、解析対象となる機械可読データを得るために、すでに入手済みの「情報Ⅰ」を除くその他多くの教科書に掲載されている用語を取り出す作業、機械可読ではないpdfファイルから教科書需要数を取り出す作業を学生アルバイトに行わせたが、その謝金が若干配分額を越えてしまった。また、研究途中で得られた成果を研究会などで報告し議論するために必要な旅費が配分額をかなり上回ってしまった。これらに物品費を充てることとしたため、目的に相応しい仕様を満たす物品の購入を次年度に回すこととした。その結果として次年度使用額が生じた。 次年度使用額(B-A)と令和6年度分の助成金を合わせて、必要計算機一式を購入する予定である。また、現在投稿中の論文の論文誌掲載料が必要であることが見込まれているため、これにも使用する予定である。
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備考 |
情報科全教科書用語 https://researchmap.jp/n-akazawa/works/43305921
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