研究課題/領域番号 |
23K02698
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研究機関 | 福岡工業大学短期大学部 |
研究代表者 |
上村 英男 福岡工業大学短期大学部, 情報メディア学科, 准教授 (80708222)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | UDL / 学習者特性 / 自己調整 / ニーズ / 選択肢 / 認知 / コミュニケーション能力 |
研究実績の概要 |
主な研究実績として次の3点が挙げられる。 1)授業におけるノートテイキングを手掛かりに学修者の認知の実態を調査した。重要事項として9か所を設定したうえで授業を行った結果、板書した4か所については平均で2.8か所(69.3%)、口頭のみで伝えた5か所については平均で1.3か所(26.3%)、合計で4.1か所(45.5%)しか重要事項として書き留められていなかった。授業者が重要として伝えたことの半数程度しか重要と認知されておらず、このことに留意して授業を進めることが重要であることが示唆された。一方で、各学生の持つ特性やその程度を考慮し、どのような支援が個別最適な学びにつながるかという点は今後の課題となった。 2)後期の授業について全授業回の学習用動画を夏季休業中に配信し、各自のニーズに従って学習のタイミングを選択できる環境を整えて取り組みの状況を調査した(前期授業についても復習用として学習用動画を配信した)。その結果、3名が後期の予習を行い、1名が前期の復習に取り組んだ。夏季休業中に学習用動画を視聴し予習(または復習)することができたことにより「後期の授業に対し意欲的に臨めた」「余裕をもって授業に参加することができた」などの意見があり、学生の内的状況の変化が感じられた。また、いずれの学生も後期中間テストにおいて成績上位層に位置する成績を修めた。 3)コミュニケーションに困難さを抱える学修者は、グループ学習をはじめとした様々な学習方略の効用を享受するに至らない可能性をはらんでいる。そこで、コミュニケーションに対する心理的負担を改善する方法として生成AIの活用を検討した。コミュニケーションに苦手意識があり孤独感を感じている学生にとっては、生成AIとの疑似的な会話であっても「話をする相手がいる」というだけで救いになり、コミュニケーション能力改善に向けた手がかりとなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、学生の特性の把握の一部として認知の実態の調査、コミュニケーション能力に困難さを抱える学生への対応の可能性の検討を行った。また、授業外における学習の機会に対する選択肢の提供などにも取り組んだ。さらには、授業内外のあらゆる学習場面において選択肢を提供する授業デザインを試行的に実施し、アンケート調査も行った。その結果、授業デザインの改善点およびアンケートにおける改善点が確認され、次年度以降への重要な知見となった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、選択肢を設けた授業デザインを実施し学生の取り組み及び変容について調査する予定である。また、それに関連して2023年度に試行的に行った結果を速報としてまとめる予定である。 あわせて、宿題に対する取り組みに選択肢を設け取り組みを調査した結果について学術論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は授業のリアルタイム配信用に用いる手書き入力が可能なPCなどを購入した。一方で、当初計上していた調査活動旅費はその多くを他予算からの支出により賄うことができたため費用が発生しなかった。あわせて外部講師による講演は日程の都合より実施することができずこれらに関連する費用が発生しなかった。 また、2023年度はこれまでに作成していた学習用動画を利用して調査を行ったが、2024年度は動画の改良を予定しており、それに伴う動画作成のためPC及び録画用カメラが必要となる。また、学会発表および論文作成用費用としても使用する予定である。
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