研究課題/領域番号 |
23K02749
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山元 翔 近畿大学, 情報学部, 准教授 (90735268)
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研究分担者 |
平嶋 宗 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10238355)
田和辻 可昌 東京大学, 大学院工学系研究科, 特任助教 (40804505)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 学習者モデル / 知識構造 / 定量モデル / 学習者体験 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者らの開発してきた算数文章題の作問学習支援システムにおける、より細やかな学習者の学習状態の推定とそれに基づくインタラクションの実現である。申請者らは算数文章題の加減・乗除を対象として、対象の構造(知識構造)を学習できる作問学習支援システムを構築している。システムは学習者の回答と知識構造に基づき適切なフィードバックを生成するが、演習への行き詰まりや理解の程度を考慮したインタラクションは十分には構築できていない。そのため本研究では、(a)知識構造と定量モデルを組み合わせた学習状態推定モデルの洗練、(b)学習者の心的状態の推定モデルの洗練、(c)各状態に基づくインタラクションを実現し、対象構造と学習者の生体情報を用いた学習状態推定の一モデルを提案、より高度な学習支援システムの構築に寄与するフレームワークを提案する。 令和5年度は、(a)に関しては、従来の探索空間に基づく学習者モデルの構築に、「わからない状態」を組み込んだり、従来のモデルの精査を実施したりした。この結果は国内の学会で適宜発表している。また、このモデルの洗練の結果、過去の取り組みに新たな知見が見出せたため、論文化を検討している。加えて、知識構造を組み立てるタイプの学習支援システムであるKit-Build概念マップシステムを用い、学習者の学習状態の大規模な調査とモデル化を試みている。この結果は国際会議で報告している。(b)についてはモデル統合の上での課題を確認できており、(c)は心的状態に対するフィードバックのタイプとその効果を検証することができたので、論文化を検討している。 以上から、(a)、(c)に関してはこのモデルを実装したシステムを設計しており、(b)、(c)についても、独自の推定モデルの検討を進められている。したがっていずれの目的も一定以上の成果は上げており、次のステップに進む準備を整えられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の目標は、(a)は「わからない状態」を組み込むことでよりモデルを洗練すること、(b)は新たな検証のためのモデルの構築、(c)は心的状態のモデルに沿ったフィードバックの検証が課題であったので、この検証を行うことが目的であった。(a)は実際にモデルを構築したことや、また、そのモデルの妥当性を検証するため、いくつかの研究を実施した。この成果は人工知能学会の全国大会や、研究会で継続的に報告を行なっている。このモデルの洗練により、これまでの利用結果に新たな知見を見出すこともできたので、これについては論文化を検討している。また、学習者の状態を推定する上で、大規模な実践利用を行う機会があったので、同様に知識構造を活用するKit-Build概念マップを用いて、学習者の学習状態を把握するためのモデル構築を検討した。この実施結果や効果については、教育とコンピュータ系の学会ではレベルの高いICCEという国際会議で報告している。(b)はいくつか従来のモデルを用いて試験的に検討を行ったものの、密接に知識構造と連携したモデル構築には不適と考えられたので、独自モデルが適切であるということを確認できている。(c)は心的状態を推定した上でのフィードバックのタイプによる効果の違いを検証することができたため、論文化を進めている。したがっていずれの目標に対しても、一定以上の成果は上げており、次のステップに進む準備を整えられていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、まずは令和5年度の研究成果の報告を中心に進める。その一方で、(a)、(c)に関連する「わからない状態」の推定モデルを実装したシステムの構築を進める予定である。Kit-Build概念マップを用いた学習者の状態推定についても継続して行っていく。(b)、(c)については、(b)に関連する心的状態推定モデルを設計中であるので、このモデルの開発と、システムに実装した上での効果検証などを進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担者にも生体情報を取得するデバイスを購入してもらい、システムの実験的利用を遠隔で行ってもらう予定であったが、デバイスの実用性やモデル構築における課題が明らかになったことから、デバイスの購入を取りやめた。そのため、物品費が0となった。利用計画としては、分担者に主に担当してもらっている学習者の状態推定モデルが一定の成果をあげられそうであるため、この成果報告としての英文校正費や国内外の学会参加費を予定している。
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