研究課題/領域番号 |
23K02786
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
風間 寛司 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (20736673)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 郷土数学 / 和算 / 算額 / 数学教育 / 福井県 / 科学教育 / 数学史 |
研究実績の概要 |
【ア 調査・研究】A.郷土の数学史編、B.郷土の算額編、C.郷土の和算家編、D.郷土の数学年表編、E.郷土の和算家の系譜(系統)編の5編から,調査・収集した本県関係の史資料とこれまでに入手した史資料を、先行研究と照合しながら調査・研究を進めた。日本学士院における文献調査も踏まえ「算額」の定義検討と記録上の算額の系譜について考察し、「算額」を「算学(数学)の問題・答・解法が記された学問的な額」,「絵付算額」を「算学(数学)の問題文の情景を描写した絵画が付加されている算額」と規定した。絵付算額に「絵画がなくとも条件をとり誤ることはない.絵画が情景理解を促したり,奉納者や郷土の記念や記録の意図が付加されたりしている。」と付記した。これまでの調査・研究成果は、RIMS「数学史の研究」において口頭発表した。また,本県越前市大塩八幡宮の「鶴亀松竹の算額(1701年)」,鯖江市中野神社の算額(1868年)を対象に赤外線カメラを用いて再調査し、大塩八幡宮のリーフレット作成にも反映した。絵付算額は本県以外にも現存することから,福島県(田村市,三春町,二本松市),愛媛県(松山市),静岡県(静岡市)で調査した。伊能隊第四次調査において敦賀の増田に周(秋)蔵が示した問題の記録があり,千葉県香取市伊能忠敬資料館と日本学士院で情報収集した。 【イ 科学教育(特に算数・数学教育)への援用】絵付算額を復元した福島県立田村高等学校の関係者に面接調査を行った。これまでの研究成果に基づく授業構成を日本科学教育学会で口頭発表した。本年度から越前市に研究対象を拡大し、学区の現存算額が本県最多の越前市南越中学校で出前授業による実証的研究を実施した。また、研究成果の社会教育への援用は、本学の公開講座、講義授業において、学生、児童・生徒、一般の方を対象に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、次の2点である。 ア 福井県における「郷土数学」に係る和算書、写本、新資料の調査・研究を行い、全体像を明らかにすること。 イ アの成果に基づき、文化的価値を強化した地域教材「福井の郷土数学ハンドブック」を開発し、科学教育への援用可能性について授業研究を通じて実証的に明らかにすること。 【ア】調査・史資料収集は、令和5年度と令和6年度の2年間で先行研究を再検討し、算額や写本の資料収集を「郷土数学」の類型により整理・統合を行う。その際、郷土史研究家への聞き取り調査や新資料・新たな調査を実施する。算額については、特に本県の嶺南地域で算額が1面も見つかっていない。一方で、山口和(1820)の道中日記と山口氏廻国算法道行(全)の史資料には、敦賀市や小浜市の和算活動についての記述がみられる。また、本県大野と大聖寺藩の算士が問題を出し合う形式で対決した記録についても調査する。研究は、令和5年度・令和6年度において、これまでに調査・収集,入手した史資料を、先行研究と照合しながら行う計画であるが,おおむね順調に進展している。 【イ 科学教育(特に算数・数学教育)への援用】学校数学への援用は、令和6年度後半よりアの結果に基づき打合せや授業実践を試行する予定であったが,社会教育への援用として、本学が毎年開催する公開講座や講演の機会に紹介することができた。その際に地域教材「福井の郷土数学ハンドブック」の開発に向けた部分的試作も行った。算額が現存する市町の学校において越前市南越中学校に協力していただき,試行実践を行った。本県に現存する算額の問題のレベルは把握済みであるが、現行学習指導要領に合わせて扱えるように解釈し教材化を行うことが一部できた。従って計画より進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1 調査・研究 調査・史資料収集は、令和5年度と令和6年度の2年間で先行研究を再検討し、算額や写本の資料収集を「郷土数学」の類型により整理・統合を行う。その際、郷土史研究家への聞き取り調査や新資料・新たな調査を実施する。算額については、特に本県の嶺南地域で算額が1面も見つかっていない。一方で、山口和(1820)の道中日記と山口氏廻国算法道行(全)の史資料には、敦賀市や小浜市の和算活動についての記述がみられる。また、本県大野と大聖寺藩の算士が問題を出し合う形式で対決した記録についても調査する。研究は、令和5年度・令和6年度において、これまでに調査・収集,入手した史資料を、先行研究と照合しながら行う。 2 科学教育(特に数学教育)への援用 学校数学への援用は、令和6年度後半より1の調査・研究結果に基づき打合せや授業実践を試行する。そのための地域教材「福井の郷土数学ハンドブッ ク」を開発し、科学教育への援用の可能性を実証的に研究する。算額が現存する市町の学校を中心に授業実践に協力していただきデータを収集する。本県に現存する算額の問題のレベルは把握済みであるが、現行学習指導要領に合わせて扱えるように解釈し教材化を行う。さらに、教室において算額が掲げられている神社仏閣の内部や周囲の様子が実感できる360度カメラを用いたデータも作成する。社会教育への援用は、本学が毎年開催する公開講座、福井市立図書館等の講演の機会に紹介する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査・研究を主に行っており,ソフトウェアと消耗品の購入を終えていなかったためである。次年度,計画に沿って使用する。
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