研究課題/領域番号 |
23K02840
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | カルト信者の子ども / 過激化の心理過程 / マインド・コントロール |
研究実績の概要 |
近親者からの信仰強制に起因する児童虐待の影響を5名のインタビュー調査と819名の量的調査によって検討した。カルト2世(MGAF)を対象にした約数百人規模の質問紙調査を実施して離脱及び回復過程をとらえ、MGAF問題の全体について心理学的モデルを作成した。サンプル獲得はWEB調査およびカルト対策諸団体の協力を得た。その主な質問構成は、MGAFの、①所属団体の特徴や受容していた強制的活動の概要、②放棄する前の信念や信条に対する確信度やユーティリティ機能のレベル、③パーソナリティ特性、④集団内外の支援者との関係、⑤離脱過程の所要期間や心身の苦悩、⑥現在の心理状況といった内容の予定であった。 その調査結果では,その被害認知は,団体活動の絶対優先,プライバシーへの干渉,言論の統制,ローダーへの絶対服従,多額の寄付や献金,罰や脅迫的行為で特徴づけられている特定の集団に集中していること,脱会してもなお続いている苦悩・葛藤として団体思想の影響,また一般社会への不適応の存在を示した。また,子どもの頃の嫌悪経験については, 団体に従う親からの強制,制限や禁止と,団体からの奉仕や活動の強制,そしてそれらに伴う一般社会での活動との葛藤が示された。なお,彼らが脱会を検討しはじめると,団体への批判的思考,団体への擁護的思考の両方が生じ,恐怖,不安,失望,罪悪感などを経験したことを示した。またそんな苦悩の相談相手が見つからず,一人で抱えているケースも多いことがわかった。特に公的機関への相談は少ないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの研究計画のうち、基礎となる計画1と計画3の一部は、おおむね予定どおり実施できた。しかし、計画2の海外のテロ対策専門機関への調査が進んでおらず、現在、自分の置かれている他業務の環境を加味するとあまり余裕があるとは言い難いが、コロナ禍で遅延していた別の基盤C研究が終了できたため、実施可能性が高まり、計画2の遅れは期間中に取り返せると考える。
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今後の研究の推進方策 |
近親者からの信仰強制に起因する児童虐待の実情を質的調査をさらに実施することによって,非構造的な面接調査によって把握し整理する。また同時にどのような心理的過程を経て脱会し、現在どのような苦悩を抱えているかを聞き取る。可能なら集団面接も並行して実施する。 また,すでに実施した量的調査の分析をさらに進めて,残された課題を検討するための新たなる量的調査を計画し,実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は長期間に一貫して取り組んできた大きなテーマであり、コロナ禍の中で遂行してきた別の日本学術振興会基盤Cの研究が進行中であったために,費用の使途が重なった。また成果発表のための海外出張費用を年度を越えてすぐ執行する予定があった。しかし、本年度からは本研究に集中し、すでに成果発表や調査計画を進めている。
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