研究課題/領域番号 |
23K02931
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
藤原 浩樹 山形大学, 医学部, 助教 (50433868)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 恐怖条件づけ / 恐怖記憶 / カルシウム / IP3 |
研究実績の概要 |
恐怖記憶の形成と消去は、ヒトのPTSD発症と治療の動物モデルとしてげっ歯類で研究され、恐怖条件づけ研究は世界的にも“恐怖記憶”制御機構の解明に注目されている。 災害を体験した後に、不安やイライラした気持ちなど誰もが心身に様々な影響を及ぼす。多くは次第に回復するが、災害時を思い出して苦しむ「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」などを発症する人もいる。現在PTSDの主な治療法として、心理療法と薬物療法が行われている。その治療法は患者さんと医師の負担が大きい持続的な消去療法が中心であるため、簡便な新しい薬物療法の開発は早急に対策する必要があり、課題となっている。患者と医師の双方の負担が大きく減少することでPTSDの治療が簡便になり、震災後などの多人数の患者に対応できる治療方法の確立が期待される。 海馬におけるシナプス伝達効率長期増強は海馬CA1領域の長期増強誘導には,後シナプス部位のNMDAグルタミン酸受容体刺激による細胞内Ca2+濃度の上昇が学習の形成に重要であることが知られている。このことからカルシウムイオンは,細胞内の情報伝達物質として重要な機能をはたしている。細胞内のカルシウムイオンの濃度を上昇させIP3受容体に結合しIP3と競合的に働き,細胞内Ca2+濃度を制御する分子として同定されたタンパク質の遺伝子改変マウスを用いることにより,記憶のメカニズムを解明することができる。 カルシウムイオン濃度の制御する分子に注目してPTSD,精神疾患へ高次機能の記憶のメカニズムを解明することを目的としている。 今年度は恐怖条件づけにおいて文脈刺激と「想起」との関連に焦点をあて,げっ歯類の恐怖条件づけ学習を行い想起障害の影響について検討し、恐怖記憶に対し獲得には影響がないが、想起に影響がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は行動学的手法を用いて記憶過程にどのような影響を与えるか明らかにすることができた。遺伝子改変マウスを用いて条件づけ,消去,テスト時における記憶への影響を検討した。今後は、電気生理学的手法を用いて脳の記憶のメカニズムを解明するための脳波計測を行うための予備実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、脳波計測を行うためのセットアップを行い動作を検証した後、神経活動を記録して脳波解析を行う。テレメーターによる脳波計測を中心に実験を行い、海馬に電極を埋め込んで神経活動記録を行うことで、より詳細な神経活動を調べる。得られた結果をもとに無拘束状態で恐怖条件づけ学習を行うことで、恐怖条件づけ時、および消去時にも詳細に検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
行動解析装置アップグレード(MED Assosates INC)を予定していたが予算が足りず次年度に繰り越した。
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