研究課題/領域番号 |
23K02963
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
下田 芳幸 佐賀大学, 学校教育学研究科, 准教授 (30510367)
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研究分担者 |
吉村 隆之 鹿児島大学, 法文教育学域臨床心理学系, 准教授 (50827144)
平田 祐太朗 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80770817)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | いじめ / 重大事態 / 自死 / 中学生 |
研究実績の概要 |
研究課題の1年目として、①いじめ重大事態の発生件数等の推移の分析、および②中学生のいじめ重大事態調査(自死案件)の調査報告書を検索・収集し、いじめの特徴を分析した。 ①については、文部科学省の調査におけるいじめ重大事態に関する件数の推移等をまとめた。その結果,種類としては「不登校」が最も多く,また「心身」と「精神」が増加傾向にあり,都道府県間の差が大きかった。さらに,いじめ重大事態を把握する以前にいじめと認知していなかった件数の割合が低くないこと,第三者委員会の設置は学校設置の割合が高いこと,近年は調査が長期化している可能性があること,調査の結果いじめが確認されなかったものも一定割合で存在することなどが明らかとなった。 ②については、収集されたうち40編におけるいじめの特徴(いじめの態様および状況)を分析した。その結果,言語いじめが最も多く確認でき,次いで疎外いじめ,恥辱強要いじめが多かった。また,言語いじめに関しては,「死ね」や「消えろ」といった語句が多く,疎外いじめには傍観という語句が,そして恥辱強要いじめには汚い物扱いや告げ口といった語句が,それぞれ多く用いられていた。そしていじめの状況としては,孤立化やエスカレートに関する語句が多く用いられていたことが確認できた。 また、いじめが自死に転じるプロセス、およびいじめ重大事態が再調査に至る理由についてそれぞれ予備的に分析を行い、2年目における学会発表等で公開できるよう、準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、いじめ重大事態に関する件数等の動向の分析、および調査結果の内容分析のうち計画の一部を進めることができ、結果を論文2編として公表することができたため、概ね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、以下の3つの点について研究を進めていく予定である。 1つ目は、学校臨床心理学における実践的な知見を得ることを目的に、いじめ重大事態の調査結果の内容分析の継続として、主に学校の課題と再発防止策を抽出・分類する。 2つ目は、いじめ自死予防に寄与する理論的知見を得ることを目的に、いじめが自死に転じるプロセスについて、中井久夫の論考(いじめの政治学)および自殺の対人関係論の適用可能性を分析する。 3つ目は、いじめ重大事態調査が再調査に至らないようにするための留意点等の情報を得ることを目的に、いじめ重大事態の再調査報告書の分析を進め、再調査に至った理由や初回調査との違い等を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費が申請より減額して交付されたことと円安の影響により当初予定していた物品の一部の値段が予定より上がっていたことにより、予定していた物品の購入に調整を行ったため。 繰越金は次年度助成金と合わせて、物品等の計画的な購入に使用する予定である。
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