研究課題/領域番号 |
23K03016
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
菅 理江 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (10342685)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 刻印付け / 記憶 / 固定化 |
研究実績の概要 |
本研究の大きな目標は「初期学習における記憶表象の形成プロセスを解明する」ことであり、初期学習の学習強度によって、新しい経験が学習にどのような影響を及ぼすかをヒヨコの刻印付けを用いて検討している。学習に関連する脳の可塑性は、刻印付けの獲得と維持に必須の脳部位であるintermediate and medial mesopallium (IMM)の即初期遺伝子の発現で検討した。 今年度は刻印付けが起こることが確かめられている比較的短い暴露時間(30分)で学習を行った後、十分な固定が起きた後に新しい経験を与えた場合どのような変化をもたらすのかを検討した。刺激は3DCG動画を用い、赤い箱が回転する刺激(R)と青と黒と白の円筒が回転する刺激(B)を用意した。刺激提示以外の時間は暗い育雛器にて個体ごとに隔離された。刻印付け後24時間においては、行動としては、排他的な既知刺激への偏好が示される。IMMでの即初期遺伝子発現の検討では、記憶の固定化が終了した学習後24時間時点で、既知刺激の再提示(RR)、あるいは新規刺激の提示(RB)を行い、1日目に刻印付けの手続きを行わなかった2つの対照群、2日目に初めて刻印付け刺激を提示した群(DR)、まったく刺激提示を行わなかった群(DD)と比較した。刻印付け時早期に学習依存的に発現する即初期遺伝子c-fosのタンパク陽性細胞の数をIMMで比較すると、実験群と左右の相互作用が有意に認められた。IMMの左右の機能差は既に知られているが、学習獲得時のc-fosの発現では左右差が見られないことがわかっている。今回の実験では学習後固定化した後に新しい刺激を提示された場合は、新規に学習するケースと異なるIMMの働きがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は行動実験とサンプリングした脳の免疫組織化学を実施したが、脳組織薄切用のクライオスタットの故障と行動実験装置拡張のため輪回しを一台外しての実施だったため、予定よりはサンプル数が少なかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、行動実験装置の拡張と自動化をすすめており、これにより行動実験のスピードは上がると考えられる。記憶の固定後の即初期遺伝子発現のパターンがわかってきたので、それに合わせた形で、固定前に新奇刺激を提示した際の変異の比較を行動と免疫組織化学的手法の両面から検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
大型フリーザーの購入を予定していたが、研究室の移動が打診されたため、現在購入を見合わせていてる。新しい行動実験装置の構築を順次おこなっているが、実験箱等の納品が2024年度になる見込みである。これらは合わせて2024年度に使用する予定である。
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