研究課題/領域番号 |
23K03020
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
楊 嘉楽 中京大学, 心理学部, 講師 (80844703)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 乳児 / 運動主体感 |
研究実績の概要 |
自分の身体を動かすときに、自分が運動制御を行っている主体(agent)であるという感覚は運動主体感(sense of agency)と呼ばれる。運動主体感は自己認識の重要な要素であり、自己を他者や環境から区別するための重要な役割を持っている。本研究は、乳児の視線から運動主体感を生起させる実験パラダイムを提案し、課題遂行中の行動方略の多様性から運動主体感を推定することで、運動主体感の発達プロセスを解明することを目的とする。令和5年度では、眼球運動制御課題において、運動主体感を低下させるときに、眼球運動の多様性が低くなるかを乳児を対象に実験的に検討した。眼球運動制御課題では、アイトラッカーを使用し、乳児が注視する場所にキャラクターを呈示することで、視線でキャラクターの運動を制御することができる。刺激への制御を操作するために、刺激の運動には、2段階の遅延(0秒、1秒)と他人運動の3条件を設置した。成人の研究では、遅延によって運動主体感が低下することが明らかにされているため、運動主体感が獲得されれば、遅延の長さによって、眼球運動の多様性が低くなり、さらに他人運動条件では多様性が最も小さくなると予測する。8ヶ月から12ヶ月の乳児40名を対象に実験した結果、0秒遅延と1秒遅延と比べ、他人条件のときにキャラクター以外の領域を探索する眼球運動が有意に少なくなると判明した。この結果から、8ヶ月以降の乳児には運動主体感が機能していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した実験は予想通りに進められた。
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今後の研究の推進方策 |
新しい眼球運動制御課題を実施する予定です。この課題では、刺激への制御は遅延による操作ではなく、他人の眼球運動を段階的に混入することで、運動主体感を低下させる。刺激への制御が異なっても、実験1と同じ結果が得られるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の倫理申請および実験環境の整備に遅れが生じ、その結果、予定していた実験参加者数の募集に必要な数に達しなかったため、人件費と謝金の支出が予定額を下回った。次年度使用額は、新しい実験の謝金として使用する予定である。
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