研究実績の概要 |
筆者は本年度に台湾国立大学のMing-Lun Hsieh教授とU(3)の3変数肥田族とU(2)の2変数肥田族からコンパクトなユニタリ群の直積U(3)xU(2)の5変数p進L関数を構成した。これはMing-Lun Hsiehと東京電機大学の千田雅隆教授が研究した楕円モジュラー形式の反円分p進L関数の高次元化である。この研究のためにコンパクトユニタリ群の肥田族のペアリングや対角サイクルに関して詳しい研究を行なった。 さらに筆者は、Ming-Lun Hsiehとコロンビア大学のMichael Harris教授と共に昨年度に構成した準分裂ユニタリ群の直積U(2,1)xU(1,1)上の正則モジュラー形式のp進L関数を概正則モジュラー形式の場合に拡張した。これは、ここ数年活発に研究されている楕円モジュラー形式の肥田族の3重積p進L関数のユニタリ群での類似にあたる。 正則モジュラー形式の構成を一般化するために、筆者はユニタリ群U(r,s)のモジュラー形式の微分作用素を詳しく研究した。志村五郎は、このような微分作用素をジーゲルモジュラー形式やエルミートモジュラー形式に関して詳しく研究して、概正則保型形式の解析的代数的理論を構築した。楕円保型形式の微分作用素の場合にはスカラー値の保型形式を考えれば十分であったが、高次の微分作用素はスカラー値モジュラー形式をベクトル値モジュラー形式に写すため計算が複雑になり、これまで具体的計算は全くされていなかった。筆者はU(2,1)の場合に志村微分作用素を明示的計算し、U(1,1)の制限や正則射影を計算した。この正則射影がCMテータ関数の高次微分値に関係することが、概正則モジュラー形式のp進L関数の構成の鍵である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筆者は今年度に, 以下の研究を行ないました。 (1) コンパクトなユニタリ群U(3)xU(2)の5変数p進L関数の構成 (2) U(2,1)の志村微分作用素の研究 (3) 2022年度の実ユニタリ群U(2,1)xU(1,1)の正則離散系列の局所積分の計算の一般化 (4) 2022年度のU(2,1)xU(1,1)の正則保型形式のp進L関数の概正則保型形式への一般化 (2)により(3), (4)のようにU(2,1)xU(1,1)のp進L関数の構成を完成させることができた。これらはU(n+1)xU(n)のp進L関数の構成を目的とするコロンビア大学のHarris教授と台湾国立大学のMing-Lun Hsieh教授との共同研究であり、本年度の研究は順調に進展したと考えられる。
|