研究実績の概要 |
多重ゼータ値の間には多くの関係式が存在することが知られており,その間の関係式の研究は多重ゼータ値研究の中心的課題である。和公式と双対関係式はその中でもシンプルで重要なものであり,両者をともに包含するものとして大野関係式と呼ばれる関係式族が知られている。各インデックス(正の整数の有限列)に対して,インデックスの成分に合計が一定となるように正の整数を加えて得られる多重ゼータ値の和を大野和と呼ぶと,大野関係式は,任意のインデックスとその双対インデックスに対して大野和が等しくなるという形で述べることができる。広瀬稔氏,村原英樹氏,小野塚友一氏,佐藤信夫氏は,大野和の間に大野関係式以外の線形関係式が存在することを見出し,二重大野関係式など,そのうちいくつかの族に対して証明を与えた(M. Hirose, H. Murahara, T. Onozuka, and N. Sato, Linear relations of Ohno sums of multiple zeta values, Indag. Math. (N.S.) 31 (2020), no. 4, 556-567)。この研究を踏まえて,今年度は,広瀬稔氏,村原英樹氏と共同で,大野和を拡張した対象物の満たす関係式について考察した。大野和を拡張することで,より豊饒な代数的構造を持つことが分かってきており,興味深い対象物となることが期待される。
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