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2023 年度 実施状況報告書

双対空間を利用した新たな計算機代数学の構築

研究課題

研究課題/領域番号 23K03076
研究機関東京理科大学

研究代表者

鍋島 克輔  東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 准教授 (00572629)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワードネター作用素 / 代数的局所コホモロジー / グレブナー基底 / 包括的グレブナー基底
研究実績の概要

初年度には予定してた正次元イデアルに付随するネター作用素の計算法の確立に成功した。計算機代数学のゼロ次元化の手法を用いることにより、正次元イデアルをゼロ次元イデアルとみなし、ゼロ次元イデアルのために構成した計算法がそのまま利用可能であることを証明した。また、確立した計算法は計算機代数システムに実装した。双対空間ので計算に必須の道具であるネター作用素の構成に成功した。この研究結果は論文にまとめられすでに公開されている。
双対空間の計算に必要となる別の道具として代数的局所コホモロジーがある。原点に台を持つ代数的局所コホモロジーの計算法は研究代表者により開発されている。この方法を拡張すべく座標変換を用いて代数的局所コホモロジーを計算する方法を提案すると共に、その応用として代数的局所コホモロジーを用いたイデアルの準素分解の手法も新たに考えられた。この研究結果はポーランドのワルシャワで開催された国際会議で発表された。
ネター作用素は特異点解析に役立ち、孤立してない特異点に付随するホロノミックD加群のためのネター作用素がどのように特異点解析に役に立つのかの研究も行った。これにより、ネター作用素からの情報が特異点の性質解明に大きな効果を発揮することがいくつかの具体例により示された。
計算機代数学において必須の道具である『グレブナー基底の計算』は本研究でも頻繁に行われる。また、特異点変形の研究も念頭に置いているのでパラメータ付きグレブナー基底(包括的グレブナー基底系)の計算も本研究では頻繁に必要になる。そこで、高速にパラメータ付きグレブナー基底を計算する手法についても考察され、新たなパラメータ付きグレブナー基底計算が確立された。これはKapur-Sun-Wangのアルゴリズムと鍋島アルゴリズム、また、ゼロ次元特化型の包括的グレブナー基底系のアルゴリズムを融合したことにより構成されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り研究が進んでいる。本研究の基盤となるのは、ネター作用素と代数的局所コホモロジーの計算である。これらの計算法はゼロ次元イデアルの場合のみしか知られておらず、まずは一般のイデアルにまで拡張することが初年度の目標であった。目標を達成しており、予想した通りの拡張が数学的に保障されると共に、その計算法は計算機に実装された。初年度から研究結果が生まれており、国際会議での研究発表と論文の掲載がされている。
包括的グレブナー基底系を計算する新たな計算法も本研究で確立され、今後の研究に大いに役立つと思われる。

今後の研究の推進方策

初年度に得られた結果を用いて、新たな計算機代数のイデアルを操作するアルゴリズムの考察を行う。計算機代数学の大きな利点の一つがグレブナー基底計算に代表される『イデアルの操作ができる』ことである。イデアルの和・商・共通部分・所属問題は基本的な操作でありグレブナー基底理論に基づき、現在、計算可能である。これらの操作を双対空間の情報を利用すると共に新たなデータ構造の下で別のアプローチをする。具体的には、グレブナー基底からの依存を軽くした別の計算法の可能性として『ネター作用素』と『素イデアル』のペアを用いたイデアルの計算について新たな枠組みを作る。

次年度使用額が生じた理由

研究が順調に進み、研究成果発表のためポーランドで開催される国際会議とキューバで開催される国際会議に参加することになった。円安の影響を受け、当初予定していた旅費の1.5倍ぐらいの旅費がかかり、初年度に物品として計算機を購入する予定であったが、金額が足らない状況となった。残りの金額と次年度の科研費とを合算し1年遅れで計算機を購入する計画である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Effective Algorithm for Computing Noetherian Operators of Positive Dimensional Ideals2023

    • 著者名/発表者名
      Nabeshima Katsusuke、Tajima Shinichi
    • 雑誌名

      Lecture Notes in Computer Science

      巻: 14139 ページ: 272~291

    • DOI

      10.1007/978-3-031-41724-5_15

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Generic Groebner basis of a parametric ideal and its application to a comprehensive Groebner system2023

    • 著者名/発表者名
      Nabeshima Katsusuke
    • 雑誌名

      Applicable Algebra in Engineering, Communication and Computing

      巻: 35 ページ: 55~70

    • DOI

      10.1007/s00200-023-00620-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ネター作用素を用いた準素イデアル成分のグレブナー基底の求め方2023

    • 著者名/発表者名
      鍋島克輔
    • 学会等名
      第32回日本数式処理学会大会
  • [学会発表] Testing tameness of a complex polynomial map via comprehensive Groebner systems2023

    • 著者名/発表者名
      Tajima Shinichi、Nabeshima Katsusuke
    • 学会等名
      Applications of Computer Algebra 2023 (ACA 2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] Primary decomposition via algebraic local cohomology with tag variables2023

    • 著者名/発表者名
      Nabeshima Katsusuke、Tajima Shinichi
    • 学会等名
      Applications of Computer Algebra 2023 (ACA 2023),
    • 国際学会
  • [学会発表] Algorithms for classification of real singularities2023

    • 著者名/発表者名
      Teramoto Hiroshi、Nabeshima Katsusuke、Fukasaku Ryoya
    • 学会等名
      WORKSHOP on Algebraic and Analytic Singularities 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] 多項式函数のtame性の判定 -- 包括的グレブナー基底系の利用 --2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一、鍋島克輔
    • 学会等名
      日本数学会秋季総合分科会(函数論)
  • [学会発表] A new look at Yano-Kato method for computing s-parametric annihilators2023

    • 著者名/発表者名
      鍋島克輔, 田島慎一
    • 学会等名
      日本数学会秋季総合分科会(函数論)
  • [学会発表] 多項式函数のbifurcation set の計算法II2023

    • 著者名/発表者名
      田島慎一、鍋島克輔
    • 学会等名
      京都大学数理解析研究所共同研究(公開型)「特異点論の展開」
  • [学会発表] パラメータ付きイデアルの根基計算の実装2023

    • 著者名/発表者名
      倉持玲介, 鍋島克輔
    • 学会等名
      京都大学数理解析研究所共同研究(公開型)「Computer Algebra -Foundations and Applications」
  • [学会発表] パラメータ付きイデアルに関する最小多項式の実装と応用2023

    • 著者名/発表者名
      蒋云, 鍋島克輔
    • 学会等名
      京都大学数理解析研究所共同研究(公開型)「Computer Algebra -Foundations and Applications」
  • [学会発表] 並列処理を活用した複数の包括的グレブナ基底系アルゴリズムの融合について2023

    • 著者名/発表者名
      和田夏, 鍋島克輔
    • 学会等名
      京都大学数理解析研究所共同研究(公開型)「Computer Algebra -Foundations and Applications」

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公開日: 2024-12-25  

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