研究課題/領域番号 |
23K03078
|
研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
服部 新 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (10451436)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | Drinfeld保型形式 / 傾斜 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
本年度はDrinfeld保型形式の傾斜についてどのような現象が起こっているかをまず把握するために,Hecke作用や傾斜に関する数値計算を主に行った.これまで数値計算に用いていた手法は調和コサイクルを用いたBandini-Valentinoの方法だが,この方法では高次の素点に対するHecke作用の明示的公式を得るのは難しい.本年度の研究では,Bandini,Valentino両氏との研究打合せにより,レベルΓ1(t)のDrinfeld尖点形式の具体的な基底とそのq展開を利用することで,任意のHecke作用を計算できるアルゴリズムを開発した.また,Bandini-Valentinoの方法をより一般のレベルのt進傾斜も計算できるようにやや一般化した. Drinfeld尖点形式の空間に現れるレベルを割る素点でのHecke作用は,有限な傾斜がk-1以下であると予想されている(傾斜の上限予想).以前の計算ではレベルΓ1(t)のt進傾斜についてこの上限予想が成り立ちそうだということが観察できていたが,本研究による数値計算で,これがより一般のレベルでも成立していそうだと分かった. 本研究では初年度に重点的に数値計算を行い,それに基づいて二年度目以降で理論的な研究に力点を移す計画である.本年度においては,傾斜の上限予想についてはBoeckleのHeckeクリスタルを用いた理論的研究も行ったが,上限予想の解決には至らなかった. また,以前に得ていたDrinfeld-Stuhler曲線を用いたHasse原理の反例について,証明の最終段階は数値計算によるが,そのアルゴリズムを改良することによりさらに多くの反例を得ることができた.これに関しては論文を作成中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
傾斜の上限予想について,BoeckleのHeckeクリスタルの分析からこの予想が従うものと考えていたが,Drinfeld保型形式に伴うGalois表現が重さの情報を失っているという事実に起因する困難があり,予定していたほど理論的研究が進まなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
傾斜の上限予想に関して,BoeckleのHeckeクリスタルを用いた研究と並行して,Drinfeld加群の自己双対性を用いた幾何的な手法も検討し,局面打開を図る.
|
次年度使用額が生じた理由 |
情報収集のために海外の研究集会に参加する予定だったが,学務との兼ね合いで予定の出張ができなかった.繰り越し分は次年度以降の旅費として使用する.
|