2023年度は、ボレル確率測度を持つ完備可分距離空間である測度距離空間 (metric measure space、mm空間) の幾何学、特に Gromov ('99) が測度距離空間の同型類全体の集合に導入したボックス距離とリプシッツ順序および測度距離空間の同型類からなる集合であるピラミッドと呼ばれる集合の幾何学に関する研究を行った。特にピラミッドの列の収束について考えたが、特に成果は得られなかった。 ピラミッドの幾何学とも関連して以前行っていた測度距離空間のリプシッツ順序に関する増大列の射影極限である空間に関する研究を進め、論文として投稿する準備を進めた。そのような射影極限は測度距離空間とは限らないが、Ambrpsio-Gigli-Savare ('14) が導入した Polish extended measure space と呼ばれる測度距離空間のある種の一般化である空間であり、ピラミッドとの関係も期待される。Polish extended measure space に対しては最適輸送理論に由来するエントロピー汎関数の凸性により与えられる曲率次元条件も定義されており、それによりピラミッドに対しても曲率次元条件などが定義でき、ピラミッドの幾何学への応用などが考えられる。 また、田代賢志郎氏を学術研究員して10月から雇用し、ハイゼンベルグ群が満たす曲率次元条件など、田代氏の専門であるサブリーマン幾何学などについて定期的に議論を行った。
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