研究実績の概要 |
本研究は研究代表者の論文 Takashi Nishimura, Hyperplane families creating envelopes, Nonlinearity, 35(2022), 2588 に端を発する研究であり,(A)「実数体R上のアフィン空間内の超曲面族に対し,(i)包絡超曲面を有するための必要十分条件,(ii)包絡超曲面を有するとき一意的であるための必要十分条件,(iii)包絡超曲面を有するとき包絡超曲面の表示公式,の三つを得ること」,(B)「配位空間が実数体上のアフィン空間ではないとき,(A)における(i),(ii),(iii)を得ること」の二つを当初の研究目的としている. (A),(B)についての2023年度の研究実績の概要を記す.(A)については,実平面内の円族に関する(i), (ii), (iii)をYongqiao Wang講師(大連海事大学)と電子メール等で共同研究を行い,共著論文1編を著し出版に辿り着けた.このテーマに関するYongqiao Wang講師との共著論文はもう1編著しているがこちらは現時点では投稿中である.(B)については,複素アフィン空間内の超平面族に関する(i), (ii), (iii)について,Stanislaw Janeczko教授(ワルシャワ工科大学),Maria Aparecida Soares Ruas教授(サンパウロ大学サンカルロス校)との共同研究をワルシャワ工科大学やサンパウロ大学サンカルロス校で精力的に実施したが,ガウス写像の定義が鍵になりそうということが判明した段階であり,実績と呼べるものはまだない. 学会等での発表については2023年度は5回実施した.そのうち海外での研究発表はポーランドで2回ブラジルで1回実施し,上記論文やその後の進展に関してコロナ禍中は不可能であった海外での周知・広報に着手した...
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の(A)は,Yongqiao Wang講師(大連海事大学)との共同研究で実平面内の円族についての(i), (ii), (iii)の結果を得ることができ既に1編の論文を出版できている.その一方で,高次元実アフィン空間内の超球族については未だ研究中である.円族の場合のアナロジーは通用せず全く新しいアイデアが必要そうであることはわかってきたが,その新しいアイデアが何なのかが全然見えてきていないのが現状である. 研究目的の(B)は,複素数体C上のアフィン空間内の超平面族についての共同研究をStanislaw Janeczko教授やMaria Aparecida Soares Ruas教授らとスタートさせたが,もっとも単純そうな「R^2内の直線族についての結果を複素化したときの結果の複素幾何学的意味付け」について議論を進めているものの,配位空間が複素アフィン空間の場合のガウス写像が鍵になるであろうということについては共通した認識を持つことはできているものの,まだ結果と言えるものはない状況である. このような状況であるので,「現在までの進捗状況はやや遅れている」と言える.
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