研究課題/領域番号 |
23K03116
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
角 俊雄 九州大学, 基幹教育院, 教授 (50258513)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 変換群論 / 有限群 / 表現空間 |
研究実績の概要 |
多様体上の滑らかな有限群作用における固定点集合として現れる多様体とその近傍を調べる.手法として,Oliver のディスク上の作用で現れる多様体についての方法の相対版の構成を考える. isovariant な条件のもとどの程度構成できるかを検討するため,自明な規約表現を含まない表現空間間の isovariant 写像が存在するための必要条件を洗い出す.手術理論にはまず次元の差があることが重要であり,部分群による表現空間の固定点集合の次元が大きく係わる.一般に,既約表現の部分群による固定点集合の次元は指標があれば求められるが,求めるのは容易ではない.それを改善するため,群環の特別な元に注目する.その元を用いて,Wasserman が定義したBorsuk-Ulam 群になるための十分条件を求め,その条件は Borsuk-Ulam群がもつ群拡大に関し閉じている性質等を同様に持つことを得た.真部分群とその正規部分群のペアをすべて考えるのは理論的な計算上も無理があるが,このアプローチは,真部分群の選別に見通しをよくすると期待している. Laitinen 予想については反例が知られているが,すべて素数べき位数でない元で代表される実共役類を2つの場合のみだけで,素数べき位数でない元で代表される実共役類を3つ以上持つ場合に反例があるかどうかについて,有限群 G の指数が小さな正規部分群との関係から検討を進めている.また,2つの固定点を持つ球面上の有限群 G 作用全体を考え,2つの固定点上の接表現の差があらわす表現環の部分集合を考えるとき,この部分場合は一般には加法群でないことが知られているが、加法群となる場合も数多く知られている.加法群とならない理由も有限群Gの指数が小さな正規部分群と関連していると思われるため,その理由についても検討している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
isovariantな手術理論を構築するため,「条件1:ともに自明な表現を含まない表現空間 U から表現空間 V へisovariant 写像が存在するとき,dim V - dim U は非負である」が成り立つかを検討している.可解群では正しいことが知られており,またいくつかの単純群では正しいことをある十分条件を考えることで示していた.それを,有限群Gに対し有理数体上の群環 Q[G] の特別な元 d_G を定め,G の部分群 H を動かして,d_H - d_{1} は群環 Q[G]の元とみなせ,d_G - d_{1} はそれらの有理数係数の和で表せる.だが,一般には非負有理数係数の和では表せない.そこで,「条件2:G の部分群 H と H の正規部分群 P に対する d_H - d_P の非負有理数係数の和で表せる」条件を考え,条件2が条件1が成り立つための十分条件であることを示した.この十分条件は,群の拡大に関し閉じていることがわかり,その帰結として可解群については成り立つことをわかる.条件2は,任意の有限体 F 上の2次射影特殊線形単純群 PSL(2,F) も成り立つし,また計算機による実験によりいくつかの単純群についても成り立つことを確かめた.
|
今後の研究の推進方策 |
有限群Gに対し有理数体上の群環 Q[G] の特別な元 d_G の性質をさらに調べる.は群環 Q[G]の元 d_G - d_{1} は G の真部分群 H を動かして,d_H - d_{1} の有理数係数の和で表せるが,そのときの負である係数をある真部分群 K とその正規部分群 N に関する d_H - d_P を用いて解消することを考え,それにより負である係数を集中させ,負の係数の数を減らしたい.負の係数をなくすことに成功すれば,その情報を固定部分群に活用し,多様体上の滑らかな有限群G-作用における固定点集合として現れる多様体とその近傍を構築する手法を開発を目指し,球面上の作用における固定点集合として現れる多様体の考察につなげる.特に,球面上の固定点が1つや2つの場合の有限群作用についての結果を得たい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越した額は、iPadの購入費用であった.iPadは2023年度中に速度が速くなる改良版が発売される予定と聞き,その購入を予定していたが,2024年度になったようなので,発売され次第購入する.
|