研究課題/領域番号 |
23K03118
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鎌田 直子 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60419687)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 結び目 / 拡張結び目 |
研究実績の概要 |
2023年度は拡張結び目の一つであるtwisted knotの不変量の研究をおこなった。Bourgoinによって定義されたtwisted knotは仮想結び目の拡張である。仮想結び目は厚みのある向き付け可能な曲面内の結び目の安定同値類と対応している。一方twisted knotは厚みのある向き付け不可能な場合も含んだ曲面内の結び目の安定同値類と対応している。仮想結び目ダイアグラムは仮想結び目の平面への射影で2重点に上下の情報と仮想交点の情報をつけたものである。twisted knotダイアグラムは仮想結び目ダイアグラムのアークにbarの情報を加えた射影図である。barの情報が付加されたアークは曲面のひねられた部分に存在することを示している。 仮想結び目の曲面への射影図の補領域が2彩色可能であるとき正則であるという。結び目は常に正則である。仮想結び目ダイアグラムにcut pointと呼ばれる点を加えることによって正則な仮想結び目ダイアグラムとみなすことができる。このcut pointを利用することによって仮想結び目から正則仮想結び目への写像が定義できる。twisted knotダイアグラムにも同様なcut pointを定義することによって正則化することができる。 一方、n-writheは仮想結び目不変量でSatohとTaniguchiによって定義された。n-writheは仮想結び目ダイアグラムの一つの交点によってできるループの非自明性を反映させることによって定義される。n-writheやそれに類似した不変量をtwisted knotへ拡張する研究は様々な研究者によってなされている。本年度はcut pointの状況を反映させることによってn-writheをtwisted knotに拡張した。この結果は国際会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は拡張結び目の幾何的構造と不変量の性質の解明、不変量を含めた新たな研究手法の確立、結び目や曲面結び目の研究への応用である。 2023年度は拡張結び目の一つであるtwisted knot不変量を導入した。不変量を含めた新たな研究手法に関して成果が得られたと考えられる。仮想結び目ダイアグラムにおいて正則性は重要である。正則な仮想結び目は結び目の性質に類似してKhovanovホモロジーなどの不変量が自然に拡張できる。twisted knotダイアグラムの正則性に関する研究は多くなされていないが、今回導入したtwisted knot不変量はその正則性に着目して定義している。tiwsted knotの幾何学的構造の解明につながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の拡張結び目の幾何的構造と不変量の性質の解明に関しては、引き続き拡張結び目の幾何学的な考察を行う。2023年に導入したtiwsted knot不変量を含めてその他の不変量の性質を調べる。計算機を利用して特徴的な拡張結び目の不変量の計算などを行う。また、他の拡張結び目に関しても新たな研究手法を探る。結び目や曲面結び目の研究への応用に関しては拡張結び目と結び目の構造を比較しつつ進めていきたい。新しい情報を収集するために研究集会に参加する。さらに多くの研究者と議論を行い、研究協力者と打ち合わせを行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は比較的早い段階で新しいtwisted knot不変量の着想を得て、その導入を行なった。そのため、予定していた計算機を利用した拡張結び目の例の不変量の計算を多くは行わなかった。より新しい良い機能の計算機を利用した方が早く研究が進むと考えられる。少しでもより良い機能の計算機を購入するために、主に計算機を多く利用すると予定される次年度に計算機やソフトウエアの購入を行うことにした。
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