研究課題/領域番号 |
23K03119
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
小池 貴之 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30784706)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 半正直線束 / 正則葉層構造 |
研究実績の概要 |
今年度は, 私がこれまでに培ってきた技術 (法線束が位相的に自明であるような複素超曲面に対し, その近傍でのある種の正則葉層構造の存在と, その超曲面が因子として定める直線束のある種の半正曲率性との間の関係に関する結果とその証明における複素力学系的・多重ポテンシャル論的技法)の複素幾何学的応用について研究を進めた. 具体的には, トロイダル群と呼ばれるある種の複素多様体上で知られていた, そのコホモロジー群とある種の直線束の力学系的・無理数論的性質との間の関係に着目し, その二次元における一般化を行うことに成功した. これは強い意味での擬凸性を持たないような開複素多様体のクラスにおけるコホモロジー群についてこれまで全く知られてこなかった側面を明らかにしたものであると同時に, 本研究計画における研究手法の有用性を実証し, 次年度以降の本研究推進への大きな足掛かりとなったものといえる. この研究成果は既にプレプリントの形で発表済みであり, いくつかの国内・国際研究集会で講演発表を行っている. また今年度は国際集会「Young Mathematicians Workshop on Several Complex Variables 2023」を韓国・釜山に於いて開催し, 当該分野における若手研究者(主に日本・中国・韓国の院生・ポスドク研究員及び若手研究者)との当該分野における研究協力関係の維持・構築・発展に寄与した. そこでは上記の私の最新の研究成果について参加者とディスカッションし, 関連する最新の研究情報の収集もできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた通りに, 本研究計画における研究手法の有用性を確かめることができたが, それだけではなく, 更にトロイダル群と呼ばれるある種の複素多様体上で知られていた, そのコホモロジー群とある種の直線束の力学系的・無理数論的性質との間の関係に着目し, その二次元における一般化を行うことに成功した. 今年度韓国・釜山に於いて開催した国際集会「Young Mathematicians Workshop on Several Complex Variables 2023」は, 例年日本・中国・韓国の院生・ポスドク研究員及び若手研究者を中心として, 当該分野における研究協力の促進のため行っているものであるが, 今年はコロナ禍以降初のほぼ完全対面での開催となった. それによる国際的研究協力関係の維持・構築・発展への寄与は大きく, またそれにより自身の上記研究成果に関して得られた最新の研究情報は非常に大きく, 来年度以降の更なる発展も期待できるため.
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今後の研究の推進方策 |
トロイダル群に於いて観察されていた結果 (そのコホモロジー群とある種の直線束の力学系的・無理数論的性質との間の関係) を今年度の研究により(2次元に於いてではあるが)強くは擬凸性を持たないある種の開複素多様体上に一般化することに成功したこと, 及び当該研究成果に関連して得られた最新の関連研究情報は今後の研究の大きな指針となった. 今後はこの研究成果により得られた新たな具体例における観察結果 (主に射影平面の9点爆発から楕円曲線を取り除いた補集合に関する結果) を深化させることを通じ, より一般の複素葉層構造に関して, 当該研究に於ける研究手法の有用性を一つ一つ丁寧に検証しつつ研究を進める. 同時に, 今年度に得られた中国・韓国の若手研究との研究協力関係の維持・発展に努めつつ, 今年度より打ち合わせを開始したフランス及びドイツの関連研究者との連携もより一層深めつつ, 国際的な最新の関連研究情報に常にアンテナをはりつつ, 将来的な当該研究成果の応用も模索してゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
打ち合わせ先方の都合によりいくつかの(研究打ち合わせのための)今年度予定していた出張が中止となったため, その出張を次年度に行う必要が生じた.
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