研究実績の概要 |
本年度は, 分担者の石渡氏と共に, 前研究課題で行ったリーマン多様体上のドリフト付きシュレーディンガー半群の離散近似の研究成果をまとめた論文の改訂作業に時間を割いたが, 最終的には海外の有力総合誌から出版された。また夏に東京で行われた国際学会ICIAMでの講演をきっかけに, 多様体学習の著名研究者数名と知り合うことが出来, 冬にニューヨーク大学のHau-Tieng Wu氏を慶應に招いて研究連絡を行った。ここでの議論がきちんとした研究の形になるかはまだ未知数だが, 次年度以降に深めていきたい。また分担者の難波氏が, 確率測度値拡散過程であるFleming-Viot過程の離散近似の研究で成果を挙げたが, この研究との新たな融合研究を模索している。
また前研究課題(20K03639)で, 分担者の星野氏, 楠岡氏と(2次元トーラス上の)exp(φ)_{2}量子場の確率量子化を実現する放物型特異確率偏微分方程式の研究を行ったが, 生成作用素の一意性問題に興味を持ち続けている。この問題は以前にAlbeverio氏, Roeckner氏らと解析的手法で取り組んだことがあったが, 駆動するノイズが有色雑音の場合にしかできておらず, 白色雑音の場合は特異確率偏微分方程式の手法を本格的に用いないといけないと思われる。また本年度に入り, リーマン多様体上のΦ^4量子場の確率量子化を実現する特異確率偏微分方程式の研究にも大きな進展があった。上記の離散近似の研究成果が確率量子化の離散近似の研究を行う際の基本的な道具になり得ることも期待できる。本年度は対面での研究集会も増えたので, これらの研究情報収集もやりやすかった。
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