研究課題/領域番号 |
23K03197
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
河井 達治 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (00824343)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 構成的数学 / 位相幾何学 / point-freeポロジー / プログラム抽出 |
研究実績の概要 |
位相幾何学における位相不変量の「計算」,その主要な応用である不動点定理などの存在定理における「存在」は,アルゴリズムの存在を含意しない.本研究の目的は,これらの位相幾何学の概念や定理に内在する,数学的対象の存在やその計算に堅固な計算論的根拠を与えることである.本研究では,構成的数学とpoint-freeトポロジーの基で位相幾何学の再構築を目指す理論的研究と.位相幾何学の主要な存在定理を定理証明システムにおいて形式化し,システム上で形式化した定理の証明からプログラムを抽出することを目指す実践的研究を課題としている.本年度は単体複体に基づく位相幾何学の構成化の第一歩として,複体を純粋な組合せ構造である抽象複体として扱うための既存の手法の分析を行い,その分析に基づきユークリッド空間のpoint-free位相の定式化を試みた.計画当初の着想は,単体のn-(n+1)次重心細分の包含関係が定める束構造をpoint-free位相空間として定式化することにより,単体(および複体)の幾何学的実現を特徴付ける,というものであった.実際,n-次元の場合,n+1濃度の集合から順序複体を構成することにより,純粋に組合せ論的な構造を用いて任意のk次重心細分が得られることがわかった.一方,point-free位相を定義するためには,k細分と(k+1)-細分に属する単体の包含関係の組合せ論的な特徴付けが必要であるが,現在は,まだその定式化を試みている最中である.1次元の場合は,このようにして構成した包含関係が,符号付き実数のpoint-free位相の構造そのものを実現することを確かめた.今後は,この知見を高次元の場合の位相に応用し,なるべく早期に一般のユークリッド空間の位相の特徴付けを得ることを目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ユークリッド空間の高次細分に基づくpoint-free位相の定式化は,本研究の基盤となるものであるが,現在,その過程が1次元の場合の分析にに留まっている.そこで,今後は,できるだけ早期に一般次元の空間に適用可能な位相表現を得るべく研究を進める.現状の問題点は,1次元,2次元の場合は,視覚に基づく直観から単体の包含関係に関する洞察を導くことが可能であったが,高次元の場合は同様の手法が適用できないことである.そのため,高次元の位相の定式化には,1次元,2次元で得られた特徴付けを,一般次元にも適用可能なように純粋に組合せ論的な特徴付けに翻訳するこが必要であるという認識に至っている.次年度の研究では,この方針に基づき,一般次元のユークリッド空間のpoint-free位相を定式化する計画である.
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】でも述べたが,今後の研究では,まず,1次元,2次元で得られた特徴付けを,一般次元にも適用可能な純粋に組合せ論的な言葉に翻訳し,このことを通して,一般次元のユークリッド空間のpoint-free位相を定式化する.また,このように定式化した空間が,古典的な位相幾何学の幾何学的実現に対応することを確める.一方,一般次元のユークリッド空間のpoint-free位相の応用として,まずは,Brouwerの不動点定理,Borsuk-Ulamの定理のpoint-freeトポロジーにおける証明を与える.これらの定理には組合せ論的な証明が既に存在するが,既存の証明は背理法に基づくものである.本研究の目標は,これらの定理が主張する不動点の候補を列挙するような,アルゴリズムに基づく構成的な証明を与えることである.
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次年度使用額が生じた理由 |
健康上の理由により,計画していた海外渡航(在外研究,関連学会への参加)を中止せざるを得なかったことが理由である.繰越しとなった研究費は,来年度,研究のための旅費(海外研究機関における研究・滞在費,国際学会の参加費),および,研究上必要な専門書の購入に当てる予定である.
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