研究課題/領域番号 |
23K03206
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
平田 康史 神奈川大学, 工学部, 特任准教授 (70375400)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 単調正規空間 / 決定不可能命題 / 積空間 / 辞書式順序積 / irreducible / dually discrete / D-空間 / extent |
研究実績の概要 |
単調正規空間は、 距離空間や全順序位相空間を一般化した概念であり、本研究はその様態の解明を目指すものである。特に、その積空間の性質を位相空間論・集合論の両面からのアプローチで調べる。集合論の公理系ZFCは, 一般的な数学でのほぼ共通の前提となっているもので、多くの数学的命題がZFCから証明されている。しかしその一方で、ZFCだけでは肯定も否定もできないような命題も存在し、それを決定不可能命題とよぶ。本研究では、単調正規空間に関連する決定不可能命題を探す。 一般順序空間、特に順序数も単調正規空間である。2つの順序数の積の可算パラコンパクト性とその周辺の性質の比較や、閉集合のC*-、P-embedded の差異の有無などについて、大分大の家本氏、神奈川大の矢島氏と共同研究を行い、その研究結果について、2023年9月の日本数学会秋季分科会と、12月のジェネラルトポロジーシンポジウムにおいて講演を行った。 家本氏との共同研究で、辞書式順序積のdensityとspreadを計算した。その論文の掲載が2024年4月に決まった。 D-空間性を弱めたものとして、dually discrete空間、aD-空間、irreducible空間の概念がある。矢島氏との共同研究で、コンパクト距離空間からなるΣ積空間がdually discreteになることを証明した。また、空間Xの無限積空間X^ωがirreducibleになることと、extentとLindelof degreeとよばれる基数関数(を少しアレンジしたもの)が一致することが必要十分であることを証明した。このことから、可算無限離散空間Nのω_1個の積空間はirreducibleであることが明らかになった。また、Nの無限積空間で、irreducibleでないものが存在するかどうかは、ZFCだけでは決定不可能であることが分かった。これらの結果についての論文を投稿し、現在査読中である。また、この研究結果について、2024年3月の日本数学会年会で講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」にあるような研究成果を得ることができ、単調正規空間の解明のための研究は進展した。特に、単調正規空間の積空間に関する決定不可能命題を探すという本研究の目的の1つが達成された。数学基礎論分科会とトポロジー分科会の両方で学会発表を行い研究結果を報告した。これは、位相空間論・集合論の両面からのアプローチでの研究ということの実現にもなっている。
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今後の研究の推進方策 |
矢島氏との共同研究で得られた、距離空間のファクターをもつ積空間における弱いD-空間性についての研究結果を論文にまとめる予定である。また、単調正規空間や一般順序空間におけるD-空間性やirreducible性についての研究を更に推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者との研究打ち合わせのため大分大への出張を予定していたが、電子メールである程度の情報交換ができていたことと、12月に神奈川大で開催されたジェネラルトポロジーシンポジウムで共同研究者との打ち合わせができたので、2023年度中は大分への出張はしなかった。2024年度は京都でのRIMS集会や、大阪での日本数学会総合分科会等に参加する予定があり、また、大分への研究打ち合わせも必要に応じて行く予定なので、前年の旅費の未使用分は2024年度の旅費に充てたい。 また、論文の別刷り購入用に計上していた予算は、論文の掲載決定が2023年度中に間に合わなかったため、当該年度中には使用しなかった。その分については、昨年投稿済みで現在査読中の論文があるので、2024年度に掲載が決定したら、そちらの別刷り購入費として使用する予定である。
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