研究課題/領域番号 |
23K03215
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石井 克幸 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40232227)
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研究分担者 |
高坂 良史 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (00360967)
上田 好寛 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (50534856)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 閾値型近似アルゴリズム / 曲率流 / Willmore 汎関数 / Canham--Helfrich 汎関数 / Timoshenko 方程式系 / 線形安定性解析 |
研究実績の概要 |
代表者の石井は Willmore 汎関数を含む Canham--Helfrich 汎関数の勾配流に対する閾値型近似アルゴリズムを研究した。本研究では 4 階放物型方程式を用いて閾値型近似アルゴリズムを定義し、初期曲面が滑らかならば、それによって定義される閾値集合の境界も滑らかで時刻 $ t $ が十分小さければ近似的に勾配流方程式に従って動くことを証明した。この結果は現在投稿中である。また、空間曲線からなる曲率流に対する閾値型近似アルゴリズムについて複素数値熱方程式に対する解、およびその導関数の短時間挙動を詳しく調べ、曲線の曲率による影響がどこに現れるかを見た。 分担者の高坂は Canham--Helfrich 汎関数の勾配流に対する閾値型近似アルゴリズムを研究し、 この近似アルゴリズムの収束先となる弱解の構成方法について、Laux--Otto の2020年の論文を基に検討を行った。また、表面積が時間に依らず一定という制限条件を課した場合の Lagrange 未定乗数の構成について検討を行った。 分担者の上田は 2022 年度に引き続き線形安定性解析の最良性に関する研究を基に非線形問題の安定性解析に取り組んだ。これまでにその一例として研究を進めて きた時間積分で記述される記憶型消散項を考慮した Timoshenko 方程式系の解析に新たな進展があり、積分区間とその消散構造の関係性について明確な結果を得る ことができた。また、非線形性を持つ記憶型消散型の Timoshenko 方程式系についても引き続き解析を続けており、本研究によって一連の非線形問題に対する解析手法が確立されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Canham--Helfrich 汎関数の勾配流に対する閾値型近似アルゴリズムの研究については 4 階熱方程式や 4 階線形放物型偏微分方程式の基本解や初期値問題の解の性質を調べることが重要である。しかし、 2 階熱方程式や 2 階線形放物型偏微分方程式の場合に比べて研究の蓄積が少なく、また 2 階の場合と根本的な異なる部分も多く、閾値集合を定義する関数も複雑になっている。よって、 2 階熱方程式を用いる平均曲率流に対する閾値型近似アルゴリズムの場合にはほぼ自明、或いは証明が簡単にできる事柄 (例えば、閾値集合の境界の滑らかさやその近傍での解の性質) でも面倒な証明が必要である。また、解の各点評価やエネルギー評価をする場合、階数の高い導関数まで計算しなければならず、必然的に計算量が多くなる。 空間曲線からなる曲率流に対する閾値型近似アルゴリズムについては閾値集合は解の零点集合で定義されるため、その存在は超曲面の場合ほど容易ではなく、面倒な計算が必要である。また、閾値集合やその近傍での解の評価を行う際、解の実部、虚部をかなり詳しく計算する必要があり、計算量が多くなってしまう。
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今後の研究の推進方策 |
Canham--Helfrich 汎関数の勾配流に対する閾値型近似アルゴリズムの研究については共同研究者の三宅によって De Giorgi の minimizing movement scheme の方法が適用可能だという目算が立っている。そこで Laux--Otto の論文 (2020) を詳細に検討しながら、この閾値型近似アルゴリズムの収束の証明に取り組む。 空間曲線からなる曲率流に対する閾値型近似アルゴリズムについては閾値集合の存在やその近傍での複素数値熱方程式の解の挙動がある程度分かってきた。また、進行波解に相当する特殊解も構成できているので、これらを使いながら近似アルゴリズムの収束の証明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023 年度は情報収集や研究連絡のために国内出張はいくつかできたが、外国出張は先方の都合などもあり、思うようにできなかった。 2024 年度は情報収集や研究連絡、成果発表の旅費に科研費を使う予定である。必要に応じて、部件の購入・複写や消耗品の購入などに充てる。
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