研究課題/領域番号 |
23K03224
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
和田 和幸 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (80780197)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 量子ウォーク / 散乱理論 / 固有ベクトル / 指数減衰性 |
研究実績の概要 |
本研究課題のテーマである多次元量子ウォークの散乱理論を展開するためには,波動作用素の構成および漸近完全性を証明する事が重要である.これらの事項を達成するための準備として,今年度は最小速度評価の導出に取り組んだ.シュレディンガー作用素の場合と異なり,作用素の非有界性を避けるために必要な切断関数の導入が不要となるため,簡潔な形での導出が期待された.一方で,量子ウォーク特有の「時間の離散性」が問題を本質的に難しくしている事が判明した.現在の所,完全な証明を与える所までには至っていないが,もう少しこの問題に取り組み続ければ,証明が完了する目処を立てる事はできている. 1次元量子ウォークに固有値が存在した場合,その固有ベクトルの形は陽に表す事ができる.ここから,無限遠方に行くに従い,存在確率がどの程度の割合で減衰していくかを知る事ができる.特に,指数関数的に減衰する事が分かっている.一方で2次元以上の量子ウォークでは,固有値の存在がわかっている結果はあるものの,固有ベクトルの性質について明らかにした結果はほとんどない.1次元の結果の類推から,多次元の場合でも固有ベクトルは指数関数的な減衰をする事が予想される.そこで,抽象的な設定の下で固有ベクトルが指数関数的に減衰する十分条件を求め,これを多次元量子ウォークに応用する事で解決をした.この結果はコンピューター上でシミュレーションを行った際に,存在確率の分布から局在化現象が起こっているか否かを判定する際に応用される事が期待される点で意義があると考える.得られた結果は論文として国際雑誌に投稿し,現在査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最小速度評価の導出に予想よりも時間を掛けてしまってはいるものの,証明の目処は立っている.また,この問題とは別に量子ウォークの固有ベクトルに関する性質について明らかにする事ができたので,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,最小速度評価の導出を試みる.同時に具体的なモデル(2次元2状態量子ウォークや2次元4状態量子ウォーク)を扱い,ムールの評価式を得るためのConjugate作用素の構成を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はノートパソコンの購入費用,専門書の購入費用,旅費を合わせれば次年度使用額が生じない見通しであったが,専門書を当初予想していた金額より低い価格で購入する事ができた事による.次年度は海外での国際研究集会をはじめとし,様々な研究会に参加する予定であるから,主に旅費に使用する計画でいる.
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