研究実績の概要 |
本研究では, 不動点問題に対する求解法の開発を行う. 特に,連続最適化の分野で活発に研究されている近接勾配法及びその加速化法の知見を用いることで, 不動点問題を解決する新たな求解法を開発することを目的とする. 令和5年度の目標として, 以下の内容を挙げた. (1) 問題構造の調査 : 不動点問題を解くためには, 計算可能な非拡大写像が構成出来るかが重要となる.先行研究の結果を手がかりに関連する微分不可能関数の有限和(スパース信号処理で現れる正則化項・最適制御で現れる合成関数) の逆写像から構成される写像の非拡大性について検討する. また,アルゴリズムの収束性を解析するために必要な性質(単調性等) を調べる. (2) 関連する国際会議・研究集会への参加及び専門家達との打合せ : 関連する研究の集会や学会に参加することで情報を収集する. これらに基づき研究を行った結果, 非拡大写像の不動点反復法と近接勾配法の加速化法のアイディアを組みわわせた求解法を提案した. また, 解法によって生成された点列が適切な条件の元で不動点に収束することを示した. 今回扱った数学モデルは,スパース最適制御問題に直接関連することが分かったため, MATLABを用いた数値実験によって提案手法の有効性の検証を行った. 今後はスパース最適制御問題以外の工学分野への応用について検討する. また, 提案手法の収束レートに関する分析については調査が十分ではないため, 今後調査する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗がおおむね予定通りであることの理由として,不動点反復法に対して連続最適化の分野で研究されている最適化手法のアイディアを組み込んだ求解法を提案できたことが挙げられる. 扱った問題は, 求めたい問題の解が非拡大写像の不動点として定式化できる問題を効率的に解くことが可能な解法となる. また, 関連する国際会議(OP23, ACFPTO2023), 研究集会(RIMS), 国内学会(日本数学会(秋・春))に出席して講演することができ, 本研究に関連する内容について他の研究者と意見交換することができた.
|