研究課題/領域番号 |
23K03259
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新山 友暁 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (00583858)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 塑性変形 / ベキ乗則 / 自己組織化臨界 |
研究実績の概要 |
空間粗視化モデルにおいてひずみ速度一定の kinetic Monte Carlo (kMC) シミュレーションの実装を行い,シミュレーションの実行結果から定常的な流動が再現できるようにスキームを修正しその確立に取り組んだ。 遷移状態理論に従った熱活性化型の塑性イベント発生とその連鎖のみを取り入れたスキームでは,イベントの連鎖が終了しないケースや応力の不自然な周期的変動が発生することが確認された。これらの原因は時間スケールの分離が大きすぎることおよび塑性イベント発生時の固有ひずみ付加ルールの設定にあると考えられた。このため,個別イベントに所要時間を設定し,時間スケールの分離を緩和した。また,固有ひずみの付加については,いくつかの異なる分配規則を導入したシミュレーションを実行し,その結果をもとに妥当な結果を生み出す分配規則を決定した。この結果,自然な流動挙動をえることができた。また,この流動領域で塑性規模分布を計算したところベキ的な統計分布がえられることが確認できた。さらに,塑性イベント発生を規定する活性化エネルギーに時間スケールを調節可能な時間的緩和モデルを設定し,様々なひずみ速度でひずみ速度一定のシミュレーションを実行した。この結果から,特定のパラメーターにおいて負のひずみ速度依存性が自然な形で再現されることが確認できた。また,アモルファス材料とは質的な相違があるが,遅延力学系の解析によって,臨界性を顕著にする条件についての知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
kMC モデルを実装してシミュレーションした結果からいくつかの不具合が発見されたが,固有ひずみ分配規則と時間スケール分離について修正を加えることで,妥当な結果を与えるシミュレーションの実行に成功した。また,このシミュレーション結果においてベキ乗則にしたがう臨界的な塑性挙動が再現できていることも確認できた。このことからおおむね順調時進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度で空間粗視化モデルをもちいた塑性シミュレーションの基礎スキームが確立されたため,これをもちいたシミュレーションを実行していく。 ひずみ速度一定のシミュレーションを実行し,塑性変形イベントの規模・持続時間・発生時間間隔を抽出し,それぞれの統計分布の特徴を解析し,シミュレーションのスキームの妥当性を検証する。さらに,異なる温度でのシミュレーションを実行し温度ごとのデータを蓄積する。この結果に対して,特徴指数やカットオフサイズおよび分岐率に注目して解析することで,臨界性への温度の影響を調査する。また,付随的に,時間的な緩和・回復因子を加えたガラスモデルに対してひずみ速度一定のシミュレーションを行うことで,塑性流動における負のひずみ速度依存性の発生因子を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画に従ってシミュレーション実施に必要な計算サーバーおよびその周辺機器や解析用計算機を購入したが,交付額との兼ね合いから予定していた学会参加のひとつを見送ったため残額が発生した。次年度の学会参加等に使用する予定である。
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