サッカーにおける選手とチームのボール保持時間の確率分布を詳しく分析した。使用したデータはJリーグの95試合分のトラッキングデータとプレーデータである。 選手のボール保持時間はガンマ分布で表せるという結果が得られた。ガンマ分布については、以前にMendesらも報告している。また、チームの1回のボール保持で延べ何人がボールを保持したかという人数の分布は2つの幾何分布を重ね合せた分布(混合幾何分布)で表せることが分かった。混合幾何分布の起源として、チームの1回のボール保持が自陣内や敵陣内で完結しているか、あるいは自陣と敵陣にわたる横断的なものであるかに分類することを提案した。自陣内・敵陣内・横断的なボール保持における人数分布にはいずれも幾何分布的な特徴がみられ、これらを足し合わせた分布として混合幾何分布が現れると考えられる。 選手のボール保持時間分布と1回のボール保持における人数の分布を用いてチームのボール保持時間分布を表す関係式を理論的に求め、実データから理論の整合性を確認した。この理論式から、チームのボール保持時間の平均やチームのボール保持時間分布の減衰の速さなどを理論的に予測することができ、データとよく一致することが分かった。選手のボール保持時間分布・チームのボール保持人数分布・チームのボール保持時間分布の3者を結ぶ関係式はサッカー以外のスポーツでも成り立つと考えられ、本研究の解析手法の広がりが期待される。 以上の結果を応用数学分野の国際会議および日本物理学会で発表し、Physical Review E誌に掲載された。
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