研究課題/領域番号 |
23K03272
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池沢 道男 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30312797)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 六方晶窒化ホウ素 / 単一欠陥 / 共鳴蛍光 / 単一光子源 |
研究実績の概要 |
2023年度は、hBN中の単一欠陥の共鳴蛍光を得るための手法の研究を進めた他、高速波長掃引によって励起スペクトルを得るための実験系の準備を進めた。有用な欠陥をhBN中に生成するための手法の探索も進めている。 プリズムを用いた全反射による光学配置を作製した。CdSe量子ドットをテスト試料として準共鳴励起を行った際には、単一測定ではないものの励起光の散乱光はPL観測に問題にならない程度まで押さえられた。しかし、hBNのナノフレークを分散させたエタノールで実験するとナノフレークの凝集体が多く含まれているために、それが散乱源になって強い散乱光を発生させてしまう事が分かった。これを改善するために、プリズム上への分散液滴下に代わる方法をいくつか検討している。 線幅の高速測定については、高速レーザー掃引と時間相関単一光子計数ボードの同期が必要と考えており、そのための計測系とソフトウェアの準備を進めているが、まだ完成には至っていない。 上記の実験ほか予定している他の実験にとっても、有用な欠陥の密度を高めることや、発光波長が赤色領域にあるような欠陥の生成は有用であるため、主にアニール法を試した。文献にあるような不活性ガス中の850℃程度のアニールではPLスペクトルに顕著な変化は確認できなかったが、より高温の1500℃前後でのアニールやフレーク周りの環境を変えたアニールでは変化がみられており、今後良い条件を探っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関連する実験装置のトラブルで進捗に遅れが出た他、計測系の開発が担当学生の進路変更で中断したことが影響している。 文献にある条件での熱処理では欠陥の密度をほとんど増加させることができなかったことは予期していなかったことであり、より良い方法を見つけるために時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
高速線幅測定に向けた計測系の開発を早急に進めて、共鳴蛍光系と組み合わせた実験を行う。さらなる高速化のために、電場変調法を取り入れることも検討する可能性がある。試料作製に関しては、1700℃までの超高温炉を利用した条件探索を行う他、電子線照射、プラズマ処理などの効果も調べたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計測系の開発が予定より遅れたことと、試料作製の条件出しが思うように進まなかったため、必要な物品の仕様が確定しなかったために、翌年度に再度検討することになった。
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