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2023 年度 実施状況報告書

量子ビームを用いた磁気スキルミオンの高電流領域での駆動状態の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K03311
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

奥山 大輔  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (30525390)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード磁気スキルミオン / 中性子/共鳴軟X線散乱 / 非平衡定常/非平衡非定常状態
研究実績の概要

磁気スキルミオンの駆動状態を明らかにすべく、電流で駆動中の磁気スキルミオンを調べる研究を行っている。これまでの実験で磁気スキルミオンが駆動を始める臨界電流密度 jc 以上で jc に近い低電流密度時の磁気スキルミオンは、試料の端付近で塑性変形を起こしながら駆動する塑性流動が観測されることを明らかにした。また、印加電流を交流にした時に塑性変形は fc 以上の周波数で消失することも発見していた。本研究の実施期間中に解析で進展があり、fc 以上で塑性変形が消失するのは駆動中の多数の磁気スキルミオンが互いに衝突して等間隔な格子が作られるランダム組織化によることを明らかにし、論文を投稿中である。
さらに jc よりもはるかに高電流密度下での磁気スキルミオンの流動状態を研究するため、国内中性子実験及び共鳴軟X線散乱実験を行うセッティング開発を目標にしていた。中性子実験は日本JRR-3炉でコイル付き冷凍機を電流印加用に改良し電流中の実験を可能とした。JRR-3では磁性体研究用の小角中性子散乱装置はないため、冷中性子3軸分光器 HER に改良した冷凍機を搭載して実験を行ったが、今回のセッティングでは磁気スキルミオンを観測することはできなかった。これは磁気スキルミオンが存在する磁場領域が 0.18 < B < 0.22 Tesla と非常に狭いが、印加磁場の測定機構を用意しなかったためと考える。
また、共鳴軟X線散乱実験の準備状況は、FIBで加工する前段階としての極薄(10マイクロメートル程度)の試料を用意する
ところでうまくいっていない。最近、おもて面だけでなく、おもて面と裏面を交互に研磨することで50マイクロメートル程度まで試料を薄くすることに成功している。この調子で使用する研磨剤の荒さを変えながら条件を詰めて、FIB加工の前段階の試料を用意したいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

解析の進展により、臨界電流密度以上でかつ低電流密度領域の磁気スキルミオンの駆動挙動はほぼ明らかになった。一方で、本研究の目的の一つである米国NISTから日本JRR-3への実験施設の変更は、高電流中での中性子散乱実験のセッティング開発は成功しているものの、正確な磁場印加及び小角散乱装置の使用ができなかったためか、磁気スキルミオンの測定には失敗している。余談ではあるがこれまで実験を行なってきた米国NISTの中性子散乱施設は未だ長期シャットダウン中である。また、共鳴軟X線散乱実験は電流実験用の極薄試料作成に苦心していたが、最近になって一定の進展があった。

今後の研究の推進方策

中性子散乱に関しては、開発した電流印加用の装置に磁場測定機構をつけることを考えている。また、中性子小角散乱装置は測定を簡便にする上で非常に重要であるため、中性子小角散乱装置を保有する他分野のグループに協力をお願いすることを考えている。共鳴軟X線散乱については、極薄研磨試料作成の条件がわかってきたので、さらに条件を詰めてFIB加工可能な試料の準備を進めたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた共鳴軟X線散乱実験用の試料準備が予定通り進まず、物品の購入の段階まで進めていないため。最近になって進展がみられたため、2024年度に予算を使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件)

  • [国際共同研究] NIST(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      NIST
  • [雑誌論文] Low-temperature and high-pressure phase transitions of ionic liquid 1-decyl-3-methylimidazolium bromide2024

    • 著者名/発表者名
      Abe Hiroshi、Maruyama Shusei、Yoshiichi Yuto、Kishimura Hiroaki、Okuyama Daisuke、Sagayama Hajime
    • 雑誌名

      Journal of Molecular Liquids

      巻: 401 ページ: 124583-1-7

    • DOI

      10.1016/j.molliq.2024.124583

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Magnetic Excitations of the Spin-Chain Compound Tb3RuO72023

    • 著者名/発表者名
      Hase Masashi、Donni Andreas、Pomjakushin Vladimir Yu.、Nawa Kazuhiro、Okuyama Daisuke、Sato Taku J.、Asai Shinichiro、Masuda Takatsugu
    • 雑誌名

      JPS Conf. Proc.

      巻: 38 ページ: 011129-1-5

    • DOI

      10.7566/JPSCP.38.011129

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Magnetic properties of the quasicrystal approximant Au65Ga21Tb142023

    • 著者名/発表者名
      Nawa Kazuhiro、Avdeev Maxim、Ishikawa Asuka、Takakura Hiroyuki、Wang Chin-Wei、Okuyama Daisuke、Murasaki Ryo、Tamura Ryuji、Sato Taku J.
    • 雑誌名

      Physical Review Materials

      巻: 7 ページ: 054412-1-10

    • DOI

      10.1103/PhysRevMaterials.7.054412

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Unraveling the magnetic structure of YbNiSn single crystal via crystal growth and neutron diffraction2023

    • 著者名/発表者名
      Wu H.C.、Nakamura A.、Okuyama D.、Nawa K.、Aoki D.、Sato T.J.
    • 雑誌名

      Journal of Magnetism and Magnetic Materials

      巻: 584 ページ: 171054-1-7

    • DOI

      10.1016/j.jmmm.2023.171054

    • 査読あり

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公開日: 2024-12-25  

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