研究課題/領域番号 |
23K03329
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
大井 修一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主任研究員 (10354292)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 単一磁束量子 / 磁気光学イメージング / ニオブ / Type-II/1超伝導 / 中間混合状態 |
研究実績の概要 |
Ginzburg-Landau(GL)パラメータ κ が Type-I と Type-II の境界(1/√2)付近の超伝導体では、マイスナー状態、磁束格子状態、ノーマル状態以外に、中間混合状態が存在する場合があり、このような超伝導はType-II/1超伝導と呼ばれる。Type-II/1超伝導では、磁束量子の間隔が磁場侵入長の数倍の距離で安定するような相互作用が働くため、典型的なType-II超伝導体における斥力相互作用と異なり興味深い。近年の観測手段の高度化とともに、中間混合状態における凝集した磁束量子の振る舞いについて、実験的・理論的研究が進展してきているが、実空間でのリアルタイム観察はほぼ例がない。本研究では、この遷移領域の超伝導体中の磁束状態のモルフォロジー(形態)やダイナミクスについて、温度・磁場・κに対して統一的な描像を得ることを目指している。具体的には、磁気光学イメージング法により低温磁場中での動的観察を行う。本年度、観察装置の改良に取り組み、結果として、降温過程での高純度ニオブ中の単一磁束量子の可視化に成功した。ある温度(conversion temperature)以下において、引力相互作用が有効に働き始め、磁束量子が凝集しクラスターを形成する様子を観察できた。ほぼピンフリーと考えていた高純度ニオブ材であったが、実際には一部強くピン止めされクラスターに取り込まれない磁束量子も存在し、磁束間相互作用・ピン止め力・スクリーニング電流から受ける力の大小関係により、温度降下とともに様々に磁束形態が変化する様子を捕えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、観察手法である磁気光学イメージング装置の高度化を図るために、偏光顕微鏡まわりのパーツ(対物レンズ・偏光子・光源・カメラなど)について再検討・選定したほか、観察中の振動やドリフトによる観察画像のブレを改善するため、クライオスタットの固定方法について再検討を行った。また、磁気光学イメージング膜については、10K以下の低温下でも使用可能なBi置換鉄ガーネット膜を作製することができた。以上のような改良により、高純度ニオブ試料においては、単一磁束量子の分解能で個々の磁束量子がクラスターを形成する様子の可視化に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、もっぱら磁気光学イメージング装置の改良と高純度Nbの観察に注力した。次年度からは、Type-I超伝導体側まで観察対象を広げるべく、特にわずかに不純物を添加した高純度鉛試料の作製を開始し、Type-IからType-IIへGLパラメータが変化する際に、磁束量子がどのような形態をとるか可視化することで系統的な変化を調べる。超伝導体中の磁束を可視化するにあたって、より高性能な磁気光学イメージング膜であるほど、これまで見えていなかった情報(例えば、より高速な磁束量子の運動の様子)を得ることができるため、よりベルデ定数の大きいガーネット膜の作製条件を探索することをはじめ、反射膜・保護膜の形成など、イメージング膜の開発を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
GGG基板の購入に充てる予定であったが、すでに使用していたメーカーの製品の質に問題があったため一旦見合わせ、次年度より他メーカー製も含め検討することにした。
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