現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
たんぱくの光反応へ与えるアミノ酸残基の影響を見る研究の一環として、赤色蛍光たんぱくであるtagRFPにとその突然変異体であるtagRFP-Tに対して超高速分光実験を行った。このtagRFP-TはもともとのtagRFPに比べて9倍ほど高い光安定性が報告されている。この突然変異体が持つ光安定性は加えた突然変異によるアミノ酸残基との結合の変化が発色団の光異性化を可能にして、失活した発光性を再度活性化させるのではないかということが提案されているが、実際に光異性化がどのようにして活性化されどのようなタイムスケールで進行するのかという実験的証拠は得られていなかった。 本研究でtagRFPとtagRFP-Tの超高速分光を行い、その詳細なデータの解析を行い比較した結果、突然変異体では特定の分子振動モードが励起され、フェムト秒領域で発色団の光異性化が進むため、その光安定性の向上が得られるということが初めて明らかとなった。 この実験やデータ解析に時間がかかるのみならず、結果の解釈には理論計算との対比も必要であるため、当初研究結果の発表まで時間がかかると思われたが、予想以上に研究が進展し、下記の雑誌に研究結果を発表することができた。 "Excited State Vibrational Dynamics Reveals a Photocycle That Enhances the Photostability of the TagRFP-T Fluorescent Protein", Atsushi Yabushita*, Chia-Yun Cheng, Ying Kuan Ko, Takayoshi Kobayashi, Izumi Iwakura, and Ralph Jimenez, J. Phys. Chem. B, 128, 5, 1188-1193 (2024)
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