研究課題/領域番号 |
23K03361
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
川染 勇人 香川高等専門学校, 情報工学科, 教授 (90391325)
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研究分担者 |
難波 愼一 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (00343294)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 輻射捕獲 / 真空紫外分光 / ヘリウムアークジェットプラズマ |
研究実績の概要 |
原子やイオンからの発光は、電子がエネルギーの高い状態から低い状態へ遷移する際に成される。この課程の逆の課程、すなわち、光を原子やイオンの電子が吸収してエネルギーの低い状態から高い状態へ遷移する課程を光吸収という。通常は、光吸収の量は、少ないため実験において考慮する必要はないが、原子やイオンの密度が高い場合は、その量を実験結果の評価に織り込まなければならない。 これまでの研究では、ヘリウムプラズマ中での光吸収についての議論が盛んになされてきた。しかしながら我々の研究チームの実験結果から光が伝搬して分光器によって測定されるまでの伝播中に、光がヘリウム原子によって吸収されている事が分かった。したがって、輻射捕獲を定量的に評価するために、プラズマ外の周辺領域での光吸収を正確に評価することが挙げられる。 令和5年度(2023年度)は、光がプラズマから分光器入射スリットまで伝搬する距離(以下、視線長という)と中性ヘリウム原子の密度との関係が、スペクトル線強度にどのように影響を及ぼすかを調べた。測定される光の波長は、真空紫外領域に分類されるため、スペクトル線強度の絶対値を評価することは一般的に難しい。そこで、測定系固有の校正係数の影響を除くため、測定値の相対強度を評価対象とした。視線長を正確に評価するには、中性ヘリウム原子が存在する所と存在しない所とを実験的に明らかにする必要がある。そこで、本研究では、アルミニウムフィルターと単管を組み合わせて、視線上に、中性ヘリウム原子が存在しない領域を確保することに成功した。それにより当初の目標である測定結果を得ることができた。また、新たな課題としてアルミニウムフィルターの酸化に対する対策の必要性および視線上での中性ヘリウム原子の温度密度の空間分布がスペクトル線強度に影響を及ぼしていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、真空容器内に満たされた中性ヘリウムガスの密度および分光器の視線長と測定されたスペクトル線強度との関係を調べることを目標とした。視線長を確定するためにアルミニウム膜を用いて、圧力的に隔離した視線領域を確保した。この装置は、放電中でも真空容器を大気開放する必要なく、アクチュエーターにより視線長を変更できるようにしてある。これにより、目標に対する初期結果を得ることができた。同時に、本研究で提案した手法が有効であることが示された。研究計画における年度計画を概ね実行できている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に浮かび上がった問題として、アルミニウム膜の酸化による透過率の減少がある。次年度は、この問題を改善するために、実験の実施方法およびマシンタイムの設定を適切なものにして実験を行う。また、視線上の中性ヘリウム原子の温度密度の空間分布が、スペクトル線強度に与える影響を数値計算により評価する。加えて、研究計画の年度計画を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度(2023年度)に作製した、アルミニウム膜を用いた単管の問題点の洗い出しとその改良を同年度に行う予定であった。しかし、設計に慎重を期したため、また予算の効果的な使用の観点から、年度内には実施せず、改良品の作製を令和6年度(2024年度)に実施することが妥当と判断したため、繰越とした。
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