研究課題
研究代表者が開発したプラズマ回転およびイオン反磁性ドリフト効果を考慮した拡張MHD安定性解析コードMINERVA-DIを用いて,米国DIII-D装置におけるエッジローカライズドモード(ELM)抑制運転の1つであるquiescent H-mode (QH-mode)が得られる運転領域の同定を試みた.研究代表者のこれまでの研究で,QH-modeではプラズマ電流を主因として発生するMHDモード(K/PM)が回転により安定化されることを明らかにし,この安定化がQH-modeで観測される周辺高調波振動(EHO)を引き起こす要因と考えられることを示し,さらに周辺閉じ込め改善領域(ペデスタル)のイオン温度が高いほどMHDモードが安定化される一方,ペデスタルの位置がプラズマ表面に近づくほどK/PMが不安定化されることを明らかにした.令和5年度はこの理解を踏まえて,QH-mode状態が得られる運転領域の同定を目的として,DIII-D装置での実験結果の数値解析を実施した.この実験では,QH-mode状態となったプラズマにおいて回転速度を減少させてELMが発生する状態に一旦遷移させたのちに回転を再び増加させることでQH-mode状態が回復おり,解析は最初のQH-mode,ELM発生時および2回目のQH-modeのそれぞれの状態に対して行った.その結果,QH-modeでは高いイオン温度が重要であることが確認できたが,ペデスタル分布の位置が表面近くに存在する場合にもELMが発生することが明らかになった.これは,高いイオン温度と速いプラズマ回転により「QH-mode運転領域」が広く得られることがQH-modeの実現に不可欠であり,ペデスタルが表面近傍に存在しても,イオン温度や回転速度の低下により同運転領域が狭くなり,プラズマがこの領域外に出た場合にはELMが発生することを示した.
3: やや遅れている
令和5年度においては,「標準的な」quiescent H-mode(QH-mode)の運転領域の同定についての研究成果が国際会議(IAEA核融合エネルギー会議)の口頭発表に選出されたため,この成果をより有意義なものにするための研究活動に重きを置かざるをえず,本研究課題の主な解析対象である「幅広いペデスタルを持つQH-mode(WPQH-mode)」については予備的な解析に着手するにとどまった.但し,WPQH-modeの実験専門家との情報交換は順調に進められており,令和6年度は同研究者の所属する米国General Atomics社を訪問してより詳細な解析に着手する予定である.
令和6年度はWPQH-modeの具体的な解析に着手する.そのために,米国General Atomics社に所属するWPQH-modeに関する実験研究の第一人者を訪問し,解析に適した条件を持つ実験データの提供や計算結果に関する解釈などの議論を進める.
令和5年度は当該研究課題に関して米国の共同研究者との研究打ち合わせを対面で行うための時間を確保することができなかったため,令和6年度に米国を訪問するために利用する.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Proceedings of 29th IAEA Fusion Energy Conference (IAEA FEC 2023)
巻: IAEA-CN-316- ページ: 1672-1~7
巻: IAEA-CN-316- ページ: 2023-1~7