研究課題/領域番号 |
23K03366
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成田 絵美 京都大学, 工学研究科, 講師 (50757804)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 乱流輸送 / 水素同位体効果 / ジャイロ運動論コード / 機械学習 / ニューラルネットワークモデル |
研究実績の概要 |
乱流輸送モデルDeKANISが扱う主イオンは本研究課題の申請時で重水素のみであったが、軽水素及び三重水素も扱うことができるように拡張した。本拡張のために二つの改良をDeKANISに加えた。DeKANISはジャイロ運動論コードによる第一原理計算の結果を再現するニューラルネットワークモデルと、その結果を利用して乱流の飽和レベルを評価する乱流飽和モデルによって構成されている。一つ目の改良はニューラルネットワークモデルに対するものである。ここでは、入力として主イオンの質量数を追加した。また、訓練データはこれまで重水素プラズマに対するジャイロ運動論コードによる計算結果のみから構成されていたが、軽水素及び三重水素を仮定した計算結果を追加した。訓練データの点数は2.7万点程度であり、そのうち軽水素は約6千点、三重水素は約5千点である。この改良によって、不安定性の線形成長率の低波数領域における最大値と最大値を取る波数が主イオンの質量数により変化する傾向をニューラルネットワークで再現することを可能にした。ここで得られる線形成長率と波数は乱流飽和モデルに渡される。二つ目の改良は乱流飽和モデルに対するものである。主イオンの質量数が大きいほど捕捉電子モードが衝突によって抑制されやすくなるという水素同位体効果のため、波数方向の線形成長率のスペクトルは質量数により変形する。このスペクトルの変形を線形成長率の最大値と最大値を取る波数のみで表現できるように飽和モデルを改良した。二つの改良により、DeKANISを利用したITERの温度・密度分布のシミュレーションにおいて、軽水素・重水素・三重水素を考慮することが可能になった。エネルギー閉じ込め時間は質量数とともに増加し、実験観測結果と同様に傾向が得られることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書に記載したとおり、乱流輸送モデルDeKANISが扱う主イオンを軽水素・重水素・三重水素に拡張し、プラズマの分布予測の実施によって水素同位体が分布形成に与える影響を示した。得られた結果は実験観測と定性的に一致するものであった。DeKANISの開発による成果は第29回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議(FEC)において口頭発表に選出され、当該研究分野において広く周知された。 DeKANISはプラズマの中心部の乱流輸送を対象としたモデルであるが、Hモードプラズマの実験において同位体効果は周辺部でも顕著に観測されており、水素同位体効果の実験観測を定量的に再現するためには周辺部の予測も同時に行う必要がある。Hモードプラズマの周辺部の輸送を予測するための確立したモデルは世界的に見てもないため、周辺部の輸送モデリング研究を始動させた。水素同位体効果の導入には至っていないものの、簡易的な条件下で周辺部の温度と熱拡散係数を推定するモデルを提案し、計画以上の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に始動させた周辺部の輸送モデリング研究を進め、プラズマの中心部と周辺部を無矛盾に扱ったプラズマの分布予測の実現を目指す。また、乱流輸送モデルDeKANISが扱うイオン種として不純物イオンを追加できるように拡張を進める。ここでは、両極性条件を満たす粒子束をイオン種ごとに算出することが求められるため、粒子輸送に着目したジャイロ運動論コードの計算結果の解析を実施し、DeKANISに結果を反映させるためのモデルを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議に出席するための海外出張旅費に支出予定であったが、別の研究費で支援してもらえることになったため、当該旅費として確保していた予算の一部を利用して、当初の予定よりも性能の高いパソコンを購入した。また、残りの予算は翌年度に繰り越し、海外出張旅費にあてる。
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