研究課題
現在、プラズマプロセスは大規模集積回路製造前工程の70%以上に使用されており、現代社会を支える基幹科学技術として発展している。プロセスプラズマ中のイオン・ラジカルの密度と運動エネルギーを制御することで、集積回路の微細化及び3次元高層化が達成されている。今後のさらなる微細化及び複雑化した半導体製造において、反応に寄与するイオン・ラジカルを精度よく制御できる放電手法が求められている。本研究は、任意波形電圧放電手法を用いてプラズマ内部パラメータであるイオン角度分布関数、イオンエネルギー分布関数、電子エネルギー分布関数などを制御できることを示し、その適用可能範囲を定量的に明らかにし、その機構を解明すること及び成膜への応用を目的に研究を行っている。1年目は、どのような任意波形電圧放電が、電子エネルギー分布関数制御及びイオン角度分布関数、イオンエネルギー分布関数を制御可能かどうかの研究を主に行った。2周波重畳放電において、重畳周波数がイオンプラズマ周波数近傍より小さい周波数にすると、イオン一個あたりのエネルギーが急激に増大することを明らかにした。従来イオンプラズマ周波数以下にバイアス電圧周波数を設定することは知られているが、その周波数依存性は詳細に調べておらず、イオン園ルギーの急激な減少だけでなく、さらに重畳周波数を低くするとエネルギーは減少することも示した。また、イオン及び電子のプラズマ密度分布が重畳周波数で空間的に揺らぐことからシース厚の時空間的揺動がイオン角度分布にも影響を与えることが示唆された。また、単一周波数を高周波にした場合と、2周波放電における重畳周波数をより高い高周波(27MHz以上)に設定した場合を比較したところ、プラズマのバルク部とシース部でも規格化された電場揺動が2周波放電の方が大きく電子エネルギー分布関数に関連するパワー吸収を効率的に行える可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
今年度予定していた検討事項のうち、予定していた項目1) どのような任意波形電圧放電が、電子エネルギー分布関数制御及びイオン角度分布関数、イオンエネルギー分布関数を制御可能かどうかの検証について、2周波重畳周波数における周波数依存性を調べることで、おおかた明らかになるなど、研究目的を着実にクリアできているため、概ね順調に進んでいると判断した。
2年目にあたる2024年度は、任意波形電圧放電において2周波重畳放電だけでなく、sin波やノコギリ波のAM変調放電や、2周波重畳放電において入射パワー密度を一定にした場合とそうでない場合にプラズマ内部パラメータにどのような影響がでるか検証する。また、2周波重畳放電において基本的な2倍高調波との組み合わせにおいて、二つの波形の位相を制御することで、放電電圧を一定に保ちながら、自己バイアス電圧を制御する手法であるが、基本波と2倍高調波の組み合わせ方を工夫することで、自己バイアス電圧を一定にしながら、放電電圧を制御することを検討しており、このような任意波形電圧放電がプラズマ及び成膜においてどのような影響を与えるかを検証する。
当初の実験装置使用計画に対して、様々な工夫等を行うことで予定よりも少ない額で実験装置を改良することができた。余剰金を、さらなる研究遂行のための物品費や研究成果発表のための旅費や論文の印刷代に使用する。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
Materials Science in Semiconductor Processing
巻: 164 ページ: 107613-1-7
10.1016/j.mssp.2023.107613
http://plasma.ed.kyushu-u.ac.jp/index.html