研究課題/領域番号 |
23K03376
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
仙洞田 雄一 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (80606111)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ブラックホール / ホーキング放射 / ガンマ線 |
研究実績の概要 |
当該年度は大きく分けて二つの成果があった。 一つ目は、ブラックホールがホーキング放射する粒子のスペクトルの数値データを作成したことである。多数のホーキング温度のサンプルについて、各温度の黒体分布(より正確には、ブラックホール周辺の時空曲率の効果を加味した灰色体分布)に従う一次粒子の放射を与え、それらの一次粒子からの電磁シャワーとQCD(量子色力学)ジェットによって生成される二次粒子のスペクトルを計算した。従前の結果から向上したのは、計算するホーキング温度の範囲をより高温にまで拡げたこと、および、二次粒子の計算のために用いるモンテカルロコードPythiaの最新バージョン(計算実施時点)を用いたことである。これらによって本研究計画の第一の目標が達成できた。 二つ目は、ホーキング温度ごとの粒子スペクトルを積分し、原始ブラックホールの蒸発間際に発生することが期待されるバースト的ガンマ線放射のスペクトルを計算したことである。この計算自体は研究計画に記した内容に含まれてはいなかったが、計画と密接に関連したものであり、かつ他の研究者らの動向から緊急性が高いと判断したために優先的に着手した。前述したように高温のホーキングの領域まで二次粒子の放射スペクトルを計算したことで蒸発の間際まで積分をすることができるようになり、結果として放射ガンマ線のエネルギーの計算範囲をより高エネルギーにまで延長することができた。現行のガンマ線望遠鏡が感度を持つエネルギー帯を覆う範囲にまで計算領域を拡張できたことで、ガンマ線望遠鏡での観測量の予言が正確にできるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、第一の課題として原始ブラックホールのホーキング放射によって生成される二次粒子スペクトルの精密な数値計算に取り組むとしていたが、1年目のうちに順調に進みこれまでに概ね完了している。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者らと議論する中で原始ブラックホールの蒸発間際に短時間にエネルギーが急上昇するバースト的な放射という非常に興味深い現象があることに気づき、他の研究者に先んじて研究を進める必要があると判断された。2年目は、第二の課題として挙げた陽電子の対消滅スペクトルの計算よりも優先してこの研究に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の支出が当初の予定を下回ったことが主要な理由である。具体的には、研究成果発表の一部を、共同研究する学生が自身の財源で出張して行ない、また、他機関の研究者との打ち合わせを先方の旅費負担で行なった。 残余は計算機の追加購入費に充て、数値計算能力を増強して成果の洗練に繋げることを計画している。
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