研究課題/領域番号 |
23K03412
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50242392)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 汎関数くりこみ群 / 厳密くりこみ群 / 量子マスター方程式 / ゲージ対称性 |
研究実績の概要 |
量子マスター方程式(QME)を満たす作用に,ゲージ対称性を尊重しながら,新たな相互作用を導入する方法について検討した. 量子マスター方程式(QME)とフローの方程式を同時に満たすゲージ論の作用を摂動論的に構成することができる.このことは,ヤング・ミルズ理論とQEDに関して,我々がすでに 1ループの範囲で示したことである.運動量切断を有限にたもったまま,作用の構成を具体的に実行できることも有用な結果である. 特に,4体フェルミ相互作用を導入した量子電磁気学(QED)を摂動論的に扱うと,4体フェルミ相互作用の寄与によってワード恒等式が修正を受ける.この修正はQMEとフローの方程式とは整合的に得られたものであるが,結果をより説得的に提示することを目指して別の立場(下記)から検討を始め,現在も継続中である. 汎関数くりこみ群は,有限のくりこみのもとでの有効作用の変化を記述する.すなわち,ある有限の運動量切断を持つ有効作用とそれより小さい運動量切断を持つ有効作用の関係を与える.もとの有効作用に新たな相互作用項を導入すると,下流の有効作用にはくりこみ群で指定されるあらたな項が加わることになる.この項は運動量切断に依存して変化するもので,composite operator と呼ばれる. ゲージ論への新たな相互作用の導入は,有効作用への composite operator の導入という形で理解される.QEDへの 4体フェルミ相互作用の導入をこの立場から考え直す議論を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
汎関数くりこみ群の手法を用いて非摂動論的にゲージ論を扱う近似法を開発することが本研究の目標である.非摂動論的扱いには,有効作用のAnsatzを選ばなくてはいけない.このとき,取り込む相互作用の形を選ぶことになる.我々は,摂動論から得られた結果とBRST対称性の構造を用いて Ansatz を構成することを目指している. コロナ禍によって共同研究者との議論の機会が減ったことで研究の遅れが生じた.また,教職員削減などに伴う研究環境の劣化により研究時間の確保が自明ではなくなっている.
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今後の研究の推進方策 |
ゲージ論への新たな相互作用の導入は,有効作用への composite operator の導入という形で理解される.composite operatorの導入が元のゲージ対称性をどのように尊重するものか,一般的な理解を得たい. 具体的な例として,QEDへの 4体フェルミ相互作用の導入を composite operator の立場から議論し,摂動論で得たワード恒等式の修正を理解する.この課題については,2024年度に入って,Morris氏(Southampton大学)との議論を開始している. また,有効作用の2点関数が非摂動的解析において果たす役割が大きいと思われるので,2点関数のフロー方程式について理解を深める. 以上に関連して,すでに得られている研究成果を論文として公表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響を受けて出張などを控えたことが主な理由で次年度使用となった.教員数削減による多忙化の影響も無視できない.2024年度には,共同研究者との議論と会議などへの参加のために国内外への出張旅費として使用する予定である.数値計算を行う計画もあり,ソフトウェアの更新なども必要に応じて行う.
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