研究実績の概要 |
本年度の研究業績に関して、π、 K、η(958) 中間子と原子核の系それぞれについて簡単に述べる。 π中間子原子に関しては、πNシグマ項の値を最新のdata から精密に決めるためのプログラムの準備が整ったと考えている。π中間子と原子核の間の相互作用(光学ポテンシャル)には、複数(6~7つ程度)のパラメーターが含まれており、今回の目的の為には、そのうちの1つ(もしくは2つ)のパラメータを不定性を最大限排除した形で求める必要がある。その実行にむけて進展している。また、奇核標的の場合の解析も進展している。 K中間子原子核系に関しては、He におけるK中間子原子の精密測定(JPARC E62)の結果を基にしたKー原子核相互作用の研究が、現象論的な形を使った場合に関して、ほぼ最終局面まで進んだ。次の年度中には成果を論文として発表できる見込みである。今回の成果を発表後、より理論的なポテンシャルを用いた議論を深める。また、今回の解析で重要性が高まった、HeにおけるK中間子原子 1s 状態の生成に関して、理論的な検討を開始する予定である。 η(958)中間子原子核系に関しては、実験研究者と密に連絡をとりながら、GSIで行われた実験結果の解析を進めている。実験で得られた、(p,d) 反応における重陽子 (d) のエネルギースペクトラムの最終結果が近い将来に得られると思われる。理論的には、対応するスペクトラムをGreen 関数法の convergion part として計算している、また、semi-exclusive 反応 (p,dp) の利点についても、定評のある輸送模型である JAM をもちいて simulation を繰り返しており、data 解析の最適の方法を探っている。この semi-exclusive 反応の理解は、今年度大きく進歩している。
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