研究課題/領域番号 |
23K03419
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
川村 浩之 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30415137)
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研究分担者 |
田中 和廣 順天堂大学, 医学部, 教授 (70263671)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | B中間子 / 光円錐波動関数 / QCD発展方程式 / 静的相関関数 / 重力形状因子 |
研究実績の概要 |
ジュネーブのCERNにおけるLHCb実験やつくばのKEKにおけるBelle実験ではB中間子の稀崩壊の観察を通して新しい物理の探索が行われている。特に終状態に高エネルギー粒子を生じる稀崩壊過程の振幅をQCD因子化公式の枠組みで理論的に計算する際にはB中間子の光円錐波動関数(LDCA)を精度よく評価する必要がある。このLDCAは重クォーク有効理論で定義される量であり、軽いクォーク場で定義されるパイ中間子などのLDCAとは異なりカスプ特異性に由来する強いスケール依存性をもつ。このスケール依存性を記述する発展方程式の核がエネルギー・スケールの対数を含むためスダコフ型の2重対数補正を生じる。このスケール依存性について我々が過去に行った主要次数での発展方程式の解析(H.Kawamura&K.Tanaka,PRD81,114009(2010))を近年他グループにより得られた2ループ異常次元も含めた次主要次数での発展方程式に拡張した。具体的には次主要次数も含めた発展方程式の配位空間での解を求め、これに対して系統的な対数展開を行うことで次々主要対数補正までを含めたLCDAのスケール依存性を高い精度で求めた。これら詳細をまとめて原論文として発表する予定である。 また、格子QCDで非摂動計算できるクォーク・反クォーク静的相関関数とB中間子の光円錐波動関数とを関係付けるモデルケースとして、軽いクォーク・反クォーク静的相関関数をローレンツ変換とスケール変換の組み合わせによって光円錐相関と結びつける定式化を行い、得られたマッチング係数のループ積分を座標表示で計算する手法を開発した。従来の結果を再現し適用範囲を拡張する方法として論文を近く投稿予定である。また、この座標表示での計算手法を、光円錐波動関数を用いたπ中間子の電磁形状因子と重力形状因子の計算に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
B中間子の光円錐波動関数のスケール依存性を記述する発展方程式の配位空間における表示を2次の異常次元まで含めた次主要次数の精度で導出し、それに対する解の振る舞いを解析的、数値的に求めた。また、光円錐波動関数とそれに対応する静的相関関数の一般的な関係を明らかにするために陽子のパートン分布関数における定式化とマッチング関数の計算を行った。一方で、それらで用いられた計算手法を応用してπ中間子の形状因子の計算を行った。これらの計算は順調に進んだものの、結果を論文にまとめるところまで至らなかったため、上記のように自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上記で求めた次主要次数のスケール依存性を考慮し、さらにその他の非摂動パラメーターを最新の値にアップデートした光円錐波動関数を用いてB中間子の輻射レプトン崩壊の振幅・崩壊率等の理論計算を行う。さらにはそれらの誤差の見積りを行って将来期待される実験データとの比較に備える。また、QCDにおける光円錐相関関数と静的相関関数との一般的な関係を明らかにし、B中間子の光円錐波動関数の格子QCDによる第一原理計算の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には学内業務との兼ね合いや学会がオンライン開催であったことなどにより当初予定していたほど出張ができなかったため、旅費を有効に使用できなかった。また、当初計画していたコンピュータ購入については既存の設備との交換に手間がかかることから後回しになった。これらにより次年度使用額が生じたと思われる。次年度には当該年度の研究成果の学会発表および今後の進展のための専門家との議論を目的とした出張の旅費、さらにはコンピュータ等の設備の刷新のために研究費を使用する計画である。
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