研究課題/領域番号 |
23K03426
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
湊 太志 九州大学, 理学研究院, 准教授 (00554065)
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研究分担者 |
内藤 智也 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 基礎科学特別研究員 (40962915)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ミューオン捕獲 / ダブルフォノン励起 / 原子核構造 / 乱雑位相近似 / 高次効果 |
研究実績の概要 |
二次宇宙線の一つである負ミュオンは、半導体中の原子核に捕獲され荷電粒子を放出し、半導体ソフトエラーを引き起こす。この現象は、半導体の集積度が高まるほど深刻な影響を及ぼしており、次世代の半導体開発の障害となっている。ミュオンに耐性を持った半導体を設計するためには、粒子輸送シミュレーションを用いた影響評価が必要となるが、インプットに使用されるミュオン捕獲で放出される荷電粒子の情報には大きな不定性がある。本研究では、この問題を最新の「原子物理」と「原子核物理」を融合させた理論モデルによって解決することを目指す。特に、これまで考慮されてこなかったミュオンと電子の相互作用や原子核の集団運動などの多体相関を取り入れ、ミュオン捕獲後の荷電粒子の情報を高精度に予測する。 今年度は原子核の集団運動などの多体相関をミューオン捕獲反応に導入することを実施した。これまでの研究で使用していた Second-Tamm-Dancoff 近似を、原子核の基底状態補正を考慮した Second-Random-Phase-Approximation (SRPA) へ拡張した。また、使用している有効相互作用のダブルカウンティング問題を回避するために Subtraction method を導入し、Subtracted SRPA (SSRPA) の計算コードを新たに開発した。開発された計算コードを用いて、ミューオン捕獲のメソン交換流に重要なダブルフォノン励起について調べたところ、通常のシングルフォノン励起と比べて、原子核の集団運動による影響がかなり抑制されているということが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定の一つである原子核の多体相関を入れたミューオン捕獲率計算のモデルの開発を実施することができた。論文として結果をまとめることがまだできていないが、おおむねスケジュール通りの研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
ミューオン捕獲に対するメソン交換流の影響を考慮するために、メソン交換の外場を多重極展開を用いて表現する必要がある。令和6年度は、多重極展開表示を実施し、メソン交換流の影響を具体的に見積もっていく予定である。また、本研究の目的の一つであるミュオンと電子の相互作用を考慮したミュオン捕獲率とそれに伴う荷電粒子の放出の計算を実施する。令和7年度は、予測された荷電粒子のエネルギー分布を用いて、ミュオン由来のソフトエラーを再評価し、次世代半導体開発に資する成果を社会に提供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年3月に九州大学へ異動した際に、科研費で購入を予定していた物品がすでに配備されたため、一部の物品費を当該科研費で購入する必要がなくなった。一方で、海外出張にかかる費用が円高に伴って予定していた額より高くなった。結果として約4万円弱の繰り越しとなった。繰り越し額については、外部の研究者の招へい費用として使用する予定である。
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