研究課題
本研究では、中性子が極端に多い(中性子過剰な)Al原子核の励起状態における特異な構造を研究するために、スピン偏極したMg-33ビームを用いた核分光学的手法により中性過剰なAl-33の励起状態の構造を詳細に調べることを目的としている。本年度は、まずAl-33構造解明実験のために使用するGe検出器及びプラスチックシンチレータのテストを実施した。プラスチックシンチレータにおいては、ライトガイドの再設計、光電子増倍管の変更および磁気シールドの強化を行い、実際の測定環境である10 Gauss程度の磁場環境下で利用できることを確認した。また、データ収集効率化のためにこれまで用いてきたCAMACベースとしたデータ収集系からVMEをベースとしたものに移行した。TRIUMF研究所におけるAl-33の実験のためのビームタイムが本年度12月に配分されることとなり、その実験に向けて9月に2週間程度滞在し準備を行なった。9月には中性子検出器サポートフレームの組み立て・配置及び検出器の配置・動作テスト、データ収集システムの立ち上げを行なった。また、11月から12月にかけてさらに2週間程度TRIUMF研究所に滞在し、回路調整や標準線源を用いた検出器の較正など直前準備を行い、ビームタイムを実施した。実験ではMg-33核のスピン偏極生成に成功し、予定通りの統計のデータを収集することができた。得られた結果について、解析を行なっていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では中性子過剰なAl-33の実験実施は2024年度を予定していたが、ビームタイムが今年度配分されることとなり、予定を前倒して今年度実験を実施した。実験ではスピン偏極Mg-33ビームを用いた実験を行い、検出器及びデータ収集系ともに全て予定通り動作し、実験を成功裏に終えることができた。今後は、得られたデータについて解析を行う予定である。
今後は得られたデータの解析を行う予定である。本研究では、ベータ線の放出分布の空間的非対称度とガンマ線・中性子の同時測定により励起状態のスピンを決定する。このために、ガンマ線の測定のために配置したGe検出器のエネルギーおよび時間較正を行う。エネルギー較正には、実験後に取得した標準線源Co-56、Co-60、Eu-152、Cm+Cなどを用いて0.1 MeVから6 MeVまでの範囲の較正式を求める。次に、Ge検出器の前面に配置したプラスチックシンチレータを用いて、Ge検出器に入射したガンマ線およびベータ線の識別を確認する。その後、ベータ線の放出分布の空間的非対称度とガンマ線の同時測定により束縛状態のスピンの決定を行う予定である。得られた解析結果について、適宜国内外の会議で発表を行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)