研究実績の概要 |
Belle, Belle II 実験は、電子陽電子衝突型加速器KEKB, SuperKEKBをΥ(4S)共鳴のエネルギーで衝突させて、大量のB中間子を生成させる実験であるが、本研究では、Υ(4S)共鳴以外のΥ(2S)などのエネルギーで衝突させ、Υ(nS) (n=1,2,3) の崩壊を通じて、標準模型を超える新物理の探索を行う。すでに運転が終了しているBelleでは25 /fb のΥ(2S)でのデータが収集されている一方、Belle IIではΥ(2S)などでのデータ取得はまだ行われていない。 まず、Indian Institute of Technology Hyderabad の学生とともに、Belleで収集した25 /fb のΥ(2S)でのデータを用いて、Υ(2S)→lτ (l=e,μ) の探索を行った。これはレプトンフレーバーの破れを伴う崩壊であり、観測されれば新物理の証拠となる。本研究では、バックグラウンド抑制のための多変量解析を最適化したところ、従来のBaBar実験の結果を上回る感度が出せることがわかり、実データを解析した。実データは解析したところ、Bhabha事象によるバックグラウンドがシミュレーションと一致しないなどの課題が見つかったため、本測定に対する影響を評価するなどした。最終的に、Υ(2S)→lτの信号は得られなかった。トリガー効率の評価など、必要な系統誤差の評価を行いΥ(2S)→lτの分岐比の上限を求めた。この結果は従来の上限値を大きく更新するものであった。結果を論文として投稿した。 今後、Belle IIでのΥ(nS)でのデータ取得を見据え、他の測定モードの研究の検討をはじめようとしている。
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