研究課題/領域番号 |
23K03458
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太田 耕司 京都大学, 理学研究科, 教授 (50221825)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 銀河 / 星形成 / 銀河進化 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる目標は、分子ガス雲同士の衝突による星形成・非形成問題で、衝突速度と分子雲質量の二つのパラメータスペースのより広い領域で、星形成活動度との関係を調べるというものである。今年度は、近傍の衝突銀河であるアンテナ銀河を対象に詳細な解析を進めると共に、その潮汐tail先端部での分子雲探査のパイロット観測を行った。 近傍宇宙に存在する衝突銀河NGC4038/4039(通称アンテナ銀河)の主要部(二つの銀河本体が合体している部分)で詳細な解析を進めた。星形成率を導出するために、VLT搭載のMUSEによって取得されたHαの面分光データ、Spitzer Space TelescopeのMIPSによる赤外線画像、Herschel衛星のPACSによるデータ、GALEX衛星による紫外線データ等を使って、アンテナ銀河主要部の各場所における星形成率の評価を行った。ダストによる吸収の補正、星形成に関連しないシラス成分の差し引き等に非常に苦心したが、補正ほぼは終了したと考えている。一方、ALMAによるCO(1-0)のデータを解析して分子雲の同定を行った。これも不定性が大きく非常に苦労したが、とりあえずの同定は終了したと考えている。これらの結果を組み合わせ、衝突速度の大きいケースでは、分子雲の質量が大きい場合は星形成は活発だが、質量が小さい場合には星形成が見られない傾向にあることがわかった。 また、アンテナ銀河の潮汐tailの先端部での星形成の特性を調べるべく、野辺山45m電波望遠鏡を用いて分子雲探査も行った。その結果、星形成だけでなく非形成領域でも分子雲が検出され、星形成効率の非常に低い領域があることがわかった。結果は論文として出版した。 その他、Cosmic Web Detachmentシナリオの検証をすべく、相互作用銀河の存在頻度と星形成経路との関係を調べた結果の論文化も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アンテナ銀河のような複雑な系での星形成率の導出、分子雲の個別同定は極めて困難であると予想していたが、いろいろな手法やパラメータの取り方を試し、その評価の仕方によって最終結果が大きく異なるというようなことはなさそうであることが分かってきて安心した。1年でここまでの結果が得られるとは予想していなかったので、当初予想よりは進んだと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アンテナ銀河における星形成率、分子雲同定等一通りの解析はできたが、念のためもう少しチェックを進めていきたい。また結果の発表や論文化を図りたい。また、つい最近更に詳細を調べてみると、実績で記述した「衝突速度が大きい場合の重い分子雲での星形成が活発」という結果の内容は、実は個別の衝突では星形成効率は高くないのだが、衝突数が多いために全体としてその領域での星形成活動が高くなっているという可能性が出てきた。個々の衝突での星形成効率という素過程と集団としての性質は切り分けるべきであると考えられるので、更に詰めたいところである。 また、潮汐tailの観測はALMAも含めて継続したい。特にtail先端だけでなく、アンテナ銀河主要部とつなぐ、より広い範囲を含めて調べることができればと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定では計算機環境の改善を図っていたが、手持ちの環境でかなりの部分ができそうという状況になって、ほとんど使用しなかった。研究打ち合わせや研究会への参加等の出張は、忙しくて予想よりできなかった。 次年度は、データ保存用の物品購入、研究打ち合わせ・研究会参加等の旅費、成果発表(論文)、観測料等に使用予定である。
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