研究課題/領域番号 |
23K03470
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石渡 正樹 北海道大学, 理学研究院, 教授 (90271692)
|
研究分担者 |
高橋 芳幸 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00372657)
はしもと じょーじ 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (10372658)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 陸惑星 / 大気大循環モデル / 気候レジーム図 / 完全蒸発状態 / 全球凍結状態 / 系外惑星 |
研究実績の概要 |
本課題では, 様々な太陽定数の値を用いた陸惑星設定の大気大循環モデル実験を実施し, 多様な気候状態の存在条件を気候レジーム図の形にまとめ, 陸惑星における液体の水 (海洋) の存在条件を明らかにする. 陸惑星とは惑星表層の水の量が平均水深にして 10m のオーダーとなる惑星であり, 系外惑星の 1 つの姿として考えられている. 陸惑星は, 水を豊富にもつ惑星よりも大きな太陽定数のもとでも惑星表層に液体の水を有する (Abe et al., 2011)ため, 系外惑星表面における液体の水の存在条件を考える上で重要な研究対象となる. 惑星大気大循環モデル DCPAM5 を用いて. 表面全体にバケツモデルを適用した陸惑星設定における太陽定数・自転傾斜角変更実験を実施し, 全ての土壌水分が蒸発した完全蒸発状態から全球凍結状態まで多様な気候状態の存在条件を決定する.本課題の研究内容は以下の3つである. (A) 高温状態の調査: 自転角速度が地球の値の場合について太陽定数増加実験を実施し, 完全蒸発状態が発生する太陽定数を決定する. (B) 気候レジーム図の作成 : 多種類の太陽定数・自転角速度・初期状態を用いて気候状態の探索を行い, 陸惑星の気候レジーム図を作成する. (C) 検証実験: DCPAM5 以外のモデルを用いた比較実験を実施し, 結果の一般性に関する検討を行う. R05年度は, 太陽定数を 3200 W/m2 まで増加させた実験を実施した. その結果, 土壌水分のほぼ全てが蒸発する状態が得られることが確認された. ほぼ完全蒸発が起こる状態が発生する日射吸収量の閾値 650 W/m2 は過去の研究で得られていた値 415 W/m2 を超えるものとなっており, 完全蒸発状態発生の閾値にはモデル依存性が現れることがわかった.以上により, (A)の内容をほぼ終了することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R05 年度は, 「研究実績の概要」で記載したように, 3 つの課題のうちの1 つを終了することができた. また, これに並行して, 自転傾斜角と初期状態を変更した実験も開始した. 自転傾斜角を 23.5 度とした実験ではまだ完全蒸発状態を得るには至っておらず, 初期状態を変更した実験においてはまだ多重解の有無に関する結論を得るには至っていない. しかし, 「研究実績の概要」で記載した (A) をほぼ終了し (B) の内容を開始することができており, 計画としてはおおむね順調に進んでいると判断される.
|
今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しているので, 計画通りに研究を継続する. 「研究実績の概要」で記載した (B), (C) を推進する. R06 年度は, 太陽定数を減少させた場合も含めて, 複数の太陽定数と自転傾斜角を与えた実験を実施する. まずは太陽定数を減少させた実験を行ない, 全球凍結状態の発生条件を求める. この後に, 多種類の初期状態を用いて気候状態の探索をおこない, 陸惑星の気候レジーム図を作成する. これを複数の自転傾斜角の値の場合について実施し, 多様な系外惑星に適用できる気候レジーム図を完成させる. 気候レジーム図上で表現される各気候状態のブランチ(レジーム図において同種の気候状態を接続した線)の構造を明らかにし多重解が存在する太陽定数範囲や平衡状態の安定性に関する考察をおこなう.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は旅費に支出する予定であったが、数値実験が予想以上に進展したので解析作業を優先することにし学会参加を見送ることにした. このため研究計画をおおむね順調に進展させることができた. これらの研究成果の学会発表をおこなうためR06年度において使用することとする.
|