研究課題/領域番号 |
23K03485
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川島 正行 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (10281833)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 降雪雲 / 日周期変動 / 慣性重力波 / 寒気吹き出し / 領域大気モデル / 衛星データ解析 |
研究実績の概要 |
冬季の北西季節風卓越時、ユーラシア大陸の日本海沿岸部では、陸上の下層風の日変動に伴い、半日・一日周期の慣性重力波が定常的に励起されていると考えられる。本研究は、この波が日本海上で発生する降雪雲の日変動に与える影響を解明することを目的とする。 2023年度は、過去5年分の気象衛星ひまわりのデータを用いて、寒気吹き出し時、気団変質により生じる降雪雲の日変動特性について調べた。まず、気象衛星ひまわりのデータを確認し、日本海上の広い範囲で降雪雲が発生した日を抽出した。その際、温帯低気圧などに伴う上層雲が存在する日は除外した。抽出日について、赤外輝度温度(雲頂温度)の時刻毎のコンポジットを作成し、日本海上における雲頂温度、雲量の日変動について調べた。解析の結果、日本海上全域において、明け方に雲頂温度が低く雲量が多くなるという日変化が見られ、これは雲放射加熱の日変動に起因するものと推測された。この変動に加え、海上を南東方向に伝播する1日・半日周期のシグナルが雲量と雲頂温度に確認され、大陸上の境界層大気の日変化の影響が、慣性重力波として日本の沿岸部にまで到達していることが示唆された。半日変動のシグナルは、日本海北東部で特に顕著で、これは大陸東岸の沿海州の海岸線が直線的で、地形も海岸線に沿う方向に一様であるためであると推測された。 また、寒気吹き出しが特に顕著であった2020年12月から2021年1月の期間について、領域大気モデルによる数値シミュレーションを行い、陸上および海上の大気境界層の物理量の日変動について調べた。スペクトル解析の結果、大陸上の下層では、風速と気温について、1日と半日の周期に明瞭なピークが現れた。一方、海上では、風速および雲頂温度の半日周期変動のピークは日本海北東部でのみ明瞭で、衛星データ解析の結果と整合的な変動が確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で行う衛星データ解析については、ほぼ、当初の予定通り進捗しており、赤外輝度温度(雲頂温度)のスペクトル解析や調和解析に基づいた伝播性、停滞性のシグナルへの分類は終了している。気象庁レーダデータ、AMeDAS等のデータ解析については、予定よりやや遅れているが、基礎的なデータ処理は終えており、1~2ヶ月程度であれば解析できる予定である。 一方、2023年度後半~2024年度に行う予定であった領域大気モデルを用いた数値実験については、2023年度中に大部分の計算は実行済みで、解析の一部は終えており、当初の計画よりも早く進展している。以上から、課題全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、まず、気象庁レーダデータ、AMeDAS等の未解析のデータを解析する。これと並行し、これまでの研究で使用していた水平一次元浅水波モデルを拡張し、日本海域の海陸分布を入れた二次元線形浅水波モデルを作成する。衛星データ解析および領域大気モデル実験で得られた日変動のシグナルと浅水波モデルの結果と比較することで、日変動に寄与する慣性重力波とその励起源の特定を行う。浅水波モデルに与える1日・半日周期の強制としては、既に行った領域大気モデルの出力値を調和解析したものを与える。 また、2023年度中に行ったデータ解析と領域モデル実験から、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が、太陽同期した日周期振動をすることが明らかになった。この現象についても焦点を当て、今後の研究を進めてゆく予定である。
|