研究課題/領域番号 |
23K03492
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 勝 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (10314551)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 惑星大気 / 地球流体力学 |
研究実績の概要 |
今年度は、金星大気大循環モデルを用いた研究で、熱潮汐波の回転・発散流構造とエネルギー収支について調査した(Yamamoto et al. 2024)。雲頂加熱域では、発散成分と回転成分の南北流が一致するような流線関数と速度ポテンシャルの位相構造が見られ、太陽光加熱により熱潮汐波の有効位置エネルギーが生成される。太陽光加熱によるエネルギー変換だけでなく、帯状平均東西風ジェットコアが位置する雲頂では、順圧エネルギー変換によって1日潮のロスビー波構造が強化される。また、加熱域から離れた雲層の下(50km以下)では、極域の下層大気の傾圧エネルギー変換によって半日潮のロスビー波構造が強化される。従来考えられていた「雲層の加熱域から下層に伝播し、減衰しながら地面に達する」という熱強制重力波的なシンプルな描像ではなく、次の2つの視点も重要であることが分かった。(1)熱潮汐の加熱域では、Matsuno-Gill応答のような循環構造(赤道重力波とロスビー波のペア)がみられる。(2)熱潮汐波が3次元伝播をする中で、帯状平均場から擾乱エネルギーが供給されている。また、この研究では、熱潮汐波の鉛直および水平の運動量フラックスが、発散流成分や回転流成分によって、どのように形成されるのかについて明らかにした。(おそらく地形に関連した)流れの南北非対称が、赤道を横切る南北流を生み、赤道周辺域の東西風加速を複雑にしていることが示された。 地表面や放射過程が大気大循環や波動の相似性や多様性に与える影響を調べる研究として、地球型惑星の力学的相似性に着目した数値実験も行った。放射過程を簡略化した全球WRFモデルに「北太平洋の縁辺海ホットスポット」を与え、ロスビー数のみを変化させる理想化実験を行い、爆弾低気圧や二つ玉低気圧の最適出現条件を調査した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果やその途中経過を学会等で発表した(Japan Geoscience Union Meeting 2023、2023年度日本気象学会、日本流体力学会年会2023)。金星大気大循環モデルの熱潮汐の回転・発散流構造とエネルギー収支に関する研究が学術雑誌に掲載された(Yamamoto et al. 2024, Icarus)。
|
今後の研究の推進方策 |
地表面や放射過程が大気大循環や波動の相似性や多様性に与える影響を整理するために、地球型惑星や金星型惑星の大気大循環モデルを用いて、ロスビー数を変えた数値実験を行い、大気大循環構造や波動のエネルギー・角運動量収支や温帯低気圧の解析を行う。また、現実大気への応用として、高温高圧の放射伝達を考慮した現実的な金星大気大循環モデルの計算結果を解析し、雲で覆われた惑星の大気大循環構造の長周期変動を明らかにする。次年度以降、データ解析作業用サーバーを購入して、データ解析とモデル開発を効率よく行えるようにする。上記の途中経過や成果は学会発表および論文にまとめる。
|