研究課題/領域番号 |
23K03496
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
林田 佐智子 総合地球環境学研究所, プログラム研究部, 客員教授 (70180982)
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研究分担者 |
笠井 康子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (60281630)
佐藤 知紘 国立研究開発法人情報通信研究機構, テラヘルツ研究センター, 主任研究員 (60774627)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 対流圏オゾン / 衛星観測 / 大気汚染 / 下部対流圏オゾン / 大気微量成分 |
研究実績の概要 |
初年度である本年度の前半は科研費基盤B「アジアのオゾン汚染の実態把握と越境汚染の影響評価:衛星観測と化学輸送モデルの比較(2016-018)」で行った研究成果の確認と解析データの引き継ぎ作業、出版された論文の図表の再現などに時間を費やしたが、年度末にはこれまでのデータ解析作業を継続できる体制と作業の準備が整った。NASAのセンサーOzone Monitoring Instrument(OMI)のオゾンプロファイルデータについては、2004年以降の長期間分を整備できた。毎週関係者の集まるオンライン会議を開催し、参加者の意思疎通も順調に進んだ。これまで中国上空に限定していた解析対象をグローバルに広げて検証し、中東、特にカタールおよび首長国連邦周辺に高濃度のオゾンが継続的に観測されることを確認し、まずこの領域に着目して下部対流圏オゾンの動態を解析することとした。上部対流圏/下部成層圏のオゾン変動に伴うスクリーニング手法(Hayashida et al., 2018)について検討したが、特に大きく変更する必要はないとの結論に達した。並行してSentinel-5p搭載のTropospheric Monitoring Instrument(TROPOMI)による下部対流圏オゾンデータについて調査を進め、対流圏オゾンプロファイルがOMIと同等の高度分解能で導出されていることを確認した。また 韓国の静止衛星Geostationary Environment Monitoring Spectrometer(GEMS)の国際会議に参加し、GEMSからの下部対流圏オゾン導出状況について情報を収集したが、現時点ではデータが公式に公開されておらず、まずはOMIおよびTROPOMIから得られた対流圏オゾンを中心に解析を進めることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究実施開始時に申請者が定年退職で異動になり、総合地球環境研究所・客員教授と共に、本課題の分担者の所属する情報通信研究機構(NICT)の上席客員研究員となった。同時にNICTの研究分担者の一人が大学へ異動するなどしたため、研究活動の開始が多少遅れ気味であった。そのため、東工大への配分経費の一部を使い切れない事態となった。一方、NICTの協力研究員からの協力があり、また地球研の研究員からも過去の記録の提供などがあり、データ解析作業を開始できる状況が整備できたので、次年度からは順調に研究が遂行できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、中東(カタールから首長国連邦周辺)で、OMI・TROPOMIで得られた対流圏オゾンの動態を解析する。高濃度オゾンの発生領域の範囲、時期を特定する。リトリーバルにおける信頼性を確認しつつ、オゾン増加の原因を検討する。さらに、全球マップを吟味し、他にも継続的にオゾンの高濃度が発生している地域がないかどうかを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度初めに情報通信研究機構から東京工業大学に異動した笠井康子教授が、異動の手続きや新しい研究環境の整備などのため研究開始に遅れを生じ、分担者として配分された経費を一部執行できなかった。この未執行分は次年度に持ち越し、令和5年度に計画していた研究内容を令和6年度に遂行する予定である。現時点ではすでに大学における研究環境が整っており、予定通りの研究遂行が見込まれる。
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