研究課題/領域番号 |
23K03498
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
小野 耕介 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 主任研究官 (70845677)
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研究分担者 |
川畑 拓矢 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 室長 (80354447)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 線状降水帯 / アンサンブル予報 / 確率予測 / 予測可能性 |
研究実績の概要 |
2020年から2022年の3年間に九州陸上で発生した線状降水帯29事例を抽出するとともに、確率予測精度のベースラインを作成するため気象庁現業メソモデル及びメソアンサンブル予報システムの降水予測およびその環境場の予測精度評価をこの29事例について実施した。その結果、現業モデルは下層水蒸気場に負バイアスが見られること、風の鉛直シアについても負バイアスが生じていることが明らかになった。 また2021年8月13日に九州において発生した線状降水帯について、成長モードを考慮したアンサンブル予報システムを用いて予測誤差の時間発展を調べた。予測誤差は個々の対流雲から重力波とともに急速に周囲へ伝播するとともに、この急速な伝播がメソスケールにおける摂動の非線形性に大きく寄与することがわかった。この結果を日本気象学会誌「気象集誌」に"Multiscale Relative Nonlinearity in High-Resolution Forecasts for a Mesoscale Convective System"と題した論文を投稿した。 線状降水帯がもたらす洪水の予測について、大アンサンブルによってその発生確率を求めた。最大で40%を超える確率を予測できることが分かり、人々の早期避難に有効な情報であると確認された。さらにアンサンブルが算出する確率予測を用いて、決定論予測の信頼度を示すことが出来ることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線状降水帯事例を抽出するとともに、現業予報モデルの確率予測精度を調べることで予測精度のベースラインを作成することができた。また成長モードを利用したアンサンブル予報システムによる線状降水帯の予測実験を行い、その予測誤差特性を調査した。以上より、初年度として研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は解析誤差を考慮したアンサンブル予報システムを用いて線状降水帯の予測実験を行い、成長モードを用いた場合との比較を行う予定である。また実験を行う事例数を増やすことで、事例別の予測特性の違いを調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は大規模な実験を行うに至らなかったため、大容量ストレージ等のデータ保存媒体の購入を抑えたためである。
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