研究課題/領域番号 |
23K03536
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
齊藤 竜彦 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波防災研究部門, 主任研究員 (30550933)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 巨大地震 / 応力 |
研究実績の概要 |
本研究計画は,プレート間固着の応力推定について,信頼性の高い手法を開発・提案することを目的としている. 本年度は,プレート間の応力蓄積を推定する手法の枠組みを開発,相模トラフに適用することで,関東地方で将来起こりうる巨大地震の破壊シナリオを提案した (Saito & Noda 2023).プレート境界面のせん断応力分布を基底関数で展開し,地表GNSS観測点で記録される変位速度を解析することで,プレート境界面のせん断応力蓄積速度分布を推定する逆問題を定式化した.この手法を関東地方における地表変位速度データに適用し,相模トラフのプレート境界における応力蓄積速度分布を推定した.得られた応力蓄積速度分布から4つの顕著な固着域を検出した.1つはスロースリップを引き起こす固着域,残りの3つは1923年大正関東地震,1703年元禄関東地震など大地震を繰り返し引き起こす固着域と対応することを示した.過去の関東地震の履歴と本手法で推定した応力蓄積速度分布から,現在の歪みエネルギー蓄積量を概算できる.歪みエネルギーを原動力として発生する巨大地震の断層運動(地震時すべり分布)を理論計算した.房総半島南東沖のプレート間固着周辺の歪みエネルギー蓄積が顕著であり,この歪みエネルギーはマグニチュード7.8程度の大地震を引き起こすことが可能であることを示した. 従来,過去に発生した大地震のマグニチュードを調べることで,将来起こりうる大地震のマグニチュードが想定されてきた.一方,本研究で開発する手法は,プレート間の固着による歪みエネルギー蓄積量を調べることで,将来発生しうる大地震のマグニチュードを想定する.地震規模を予測する新しい手法として開発を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プレート間固着の応力蓄積速度の推定手法および推定結果に基づく現時点の応力蓄積量の評価に関する一連の解析手順の枠組みを開発し,実データを使った解析を実施した.おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在は,大地震を引き起こす歪みエネルギー量を見積もる際に,弾性体を仮定した定量モデルを使用している.より実際的な状況下での歪みエネルギー量の見積もりを実現するために,粘弾性構造を取り入れた定量モデルの構築を行う.粘弾性が歪みエネエルギー量の評価に与える影響を調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議に参加予定であったが,予定があわず不参加とした.このため当該助成金が生じた.研究計画をより円滑に遂行するため,翌年度分として請求した助成金とあわせ,計算機環境を拡充する.
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